第5章 想う
「ディック!もう大丈夫だよ」
男性二人はもうとっくに見えなくなっていた。
繋いだ手はそのままだ。
ディックはくるっと、すみれに振り返る。
「待たせて悪かったさ。あんな奴らに絡ませて」
「そんなことないよ、ありがとね!だから、手…」
離していいよ、と 言おうとした
「そうさね!」
パッと呆気なく離されてしまった。
恥ずかしくて離したかったけど、それはそれで淋しく感じてしまうなんて。
「だから、こうさね!」
手首を掴まれ、ディックと手を繋ぎ直される。
指と指を絡み合う、恋人繋に。
「また、変な奴らに絡まれたら嫌だかんな!」
今日のすみれはベッピンさんだからなーと言い、
ニッと悪戯っ子な笑みを浮かべる。
「え!ちょっと!」
すみれは恥ずかしくて慌てるも、ディックは知らんぷりする。
「日頃のお礼に、俺がエスコートさせてさ?」
早速本屋へ行くさーなんて言い、すみれの手を引く。
(私ばっかり照れて、恥ずかしい…‼)
ナンパを遠ざけるのといい、エスコートの仕方といい、女性の扱いがスマートすぎる。
なんて末恐ろしい子…!
私、今日一日心臓がもたないかも。