第17章 想い思われ反発して
(さっき、こう…
友達以上恋人未満、みたいな。
そんは雰囲気(?)になってなかった?)
先程とは全く異なる空気感に、私は頭にはてなマークを浮かべる。
そんな私の事なんて他所にラビは「めっさ嬉しー!!サンキュー♬♪」と、とても嬉しそうにはしゃいでいた。
目をキラキラさせ、ほんのり頬を染めるラビを見て「あげて良かったな」と率直に思う。
それと同時に浮かんだのは、
“ペアのマグカップ、誰と使うの?”
(そんなの、聞くまでもないよね)
総務課の彼女に決まってるではないか
(二人で、コーヒーでも飲むのかな…)
ラビと彼女が隣同士に座り、ペアのマグカップからコーヒーの湯気が立ち昇るワンシーンを想像してしまった。
ズキッと胸が痛む。
(幸せ、そうだなぁ)
いいな、なんて
羨ましい、なんて
私が望んではいけないことだ
私は、屍の上で生きてきた
たぶん、たくさんの。
例えそれが自分の意志ではなかったとしても、事実に変わりない。
そんな私が幸せになって良いはずがない。
こんなお揃いの、幸せを象徴するようなペアのマグカップなんて。
私が使う日なんて、訪れるのだろうか。
ましてや、恋人と、なんて
まだマグカップを眺めながら喜んでいるラビを見やる。
(うん、有り得ないよ…)
そもそも私に、幸せになる資格なんて、ない。
「コレ、ホントに貰っていいんさ?!」
余程嬉しいのだろう。
改めてラビは私に聞いてきた。
そんな嬉しそうな姿を見て「やっぱあげない」とは絶対に言えない。もちろん、言うつもりもないが。
「うん、いいよ」
「…大切に、使うさ」
あぁ、もう
「マジ嬉しー…」
そんな恋する乙女のような顔で言わないで
笑顔が眩しすぎて見てられないよ
「………私には必要ないし、ね!」
せいいっぱいの虚勢を張る。
だってそうしないと惨めで仕方ないから。
「―――――は?」
(あ、今)
空気に亀裂が入ったような、ピシッて音がした。
そんな 気がした
「私がコレを、誰かと使う日がくるなんて、ね」
「は?!いや、オレはてっきり……」
何を驚いてるの?
私が総務課の彼女との噂等を知らないと思ったのかな。