第17章 想い思われ反発して
あれ、最後にお風呂に入ったのはいつだろう?
ヤバい、思い出せない。
いや、思い出せないだけできっと入っているはず。うら若き乙女がそんなわけ…そんな……ね?
「すみれ〜!すみれも、飲む?」
過労でヘロヘロになったジョニーが書類の山の間から顔を出す。
「何ソレ?」
「失敗作の栄養ドリンク」
「失敗作?」
「なんの効果も得られなかった普通の栄養ドリンクだよ」
というか、失敗して効果が出なかっただけーと言いながらジョニーは怪しい小瓶をすみれに一本差し出した。
「誰が作ったの?」
「皆で作ったからなぁー。とりあえず、コムイ室長は関わってな「飲む」
ジョニーの言葉を最後まで待たず、すみれはソレを半ば奪い取るような形でゴクゴクと飲みだした。
科学班は“栄養ドリンク”と称してヤバいモノを作っては試飲をしている。
しかし彼等はあくまでも好奇心による実験をしており、ヤバいモノを作っている自覚は…………。
なので、科学班の作った薬を躊躇なく口にするのは、やはり科学班だけである。
「うん、味は普通の栄養ドリンクだね」
「おっ!すみれも飲んでみたかぁ?」
屍から帰還した(寝落ちから目覚めた)タップも会話に加わる。
「うん。失敗しちゃったんだってね?」
「そ!なら安心だよな!」
「まぁ〜コムイ室長が作ったのは迂闊に飲めないけど、班員の試作なら全然安心だよねー!!」
「それね、コムイ室長が関わってないから安心安心!
―――ところで、何の効果を期待した栄養ドリンクだったの?」
「猫の手も借りたいくらい忙しいから、猫の手も借りてるくらい元気になれる栄養ドリンクだって!」
失敗しちゃったみたいだけどね!あははーとジョニーは笑う。
「むしろ猫になりたい…」
先程の仕事で心身共にやられた。もうHPはゼロ。何なんだ黒の教団の上層部は。人をなんだと思ってるの。
ジジがあんなに怒るのも無理ないし、すみれも珍しく未だに腹立たしかった。
半ばヤケクソな気持ちで失敗作の栄養ドリンクの残りを一気に喉に流し込む。
「――――っふぅ!!」
うん、ホントに普通の栄養ドリンクだ。味は可もなく不可もなし。よしっ、頑張るぞ。あの上層部達とはまだまだ戦うのだから。