第17章 想い思われ反発して
以前のような澄まし顔の笑顔より、科学班の連中と一緒にじゃれ合っている素のすみれの笑顔が好きだ。
一方で、真面目に仕事に打ち込んでいるすみれも魅力的だ。一生懸命な横顔を見ると「俺も頑張ろ」って思わせてくれる所も好きだ。
アレもコレもと挙げたらきりがない。
好きだ
(でも、この気持ちは―――)
やっぱり邪魔でしかない
千年伯爵と黒の教団は長い戦いになるだろうから、必然的に長期のログになる。そのため黒の教団に長く居ることになるだろう。
しかし、いずれは去る身。
やはりどうしようもない想いだ。
あの頃と何も変わらない。
オレはブックマン後継者なのだから。
(おっ、すみれじゃん…)
書庫室から大分離れ、人通りの多い廊下に出ると偶然にもすみれが前方を歩いていた。
会いたかったような、会いたくなかったような
いや、嘘。
めっちゃ会いたかったさ。
ここ最近、すみれはとても忙しそうで挨拶もままならないくらいだった。
上司のジジが上層部の奴らと揉めてるとか。
エクソシストの人権とか、扱い方がどーとか。上層部の奴らはこの聖戦に勝利することだけを考えている。
(…当たり前といえば、そりゃそーさ)
勝たなければ全て無になってしまうのだから、上層部の言う事は間違っちゃいない。
…ま、詳細は知らねーけど。どうやら仕事が上手くいっていないらしい。
オレより前方にいるすみれは相変わらず重そうな書類を抱えて歩いてる。
心なしかフラフラしてるような気もする。いや、それも相変わらずか。
(また無理してんだろーな…)
ズキン、と胸が痛む。
この痛みは無駄な恋心からくるものなのか。または心身を擦り減らす彼女の姿に心が痛むのか。
はたまた両方からか。
「――…ッ、すみれ〜っ!」
答えを出したところで、オレにできる事は何もないさ。今はいつものお調子者のオレで話しかける。
この想いを押し込め、いつも通りすみれの首に腕を回し抱き着いた。