• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第16章  覚えておいて



数秒して顔をあげると、リナリーの顔がカアッと赤く染まる。






「わ、私、ダンスなんて…!」


踊ったことないよ、と。
語尾につれ段々と声量が小さくなり、自信なさげで恥ずかしがるリナリー。

普段の彼女からはあまり見かけない様子に目を丸くしてしまった。



(そんな顔も、可愛いなあ…

―――でも、そんな顔じゃなくて)






「笑ってよ、リナリー」

「えっ?」

「ラビ!コレありがと」

「お、おお?」


借りていた団服をラビに返し、リナリーの手を取り大広場の中心へ向かって走り出す。


「わっ!すみれ?!」

「どんなダンスだっていいんだよ!好きに踊ろう!」

やっぱり、リナリーには笑顔が1番可愛いから。




「リナリー、大丈夫!私がエスコートするから」

「ほ、本当っ?」

「それに、周り見てみて」


周りを見渡せば皆形式張ったダンスではなく、曲に合わせて各々好きなように手を取り合って踊っている。



「ほら!私にステップを合わせて?」

「こ、こうかしら?」

「すごい!上手だよ」



ダンスは得意な方ではなかったが、上手にエスコート出来ている事に内心ホッとする。

(ステップが簡単に踏める…ラビのおかげだ)


ありきたりの表現になってしまうが、足に羽が生えたように軽い。靴ってこんなに軽くて、なんて動きやすいんだろう。

舞踏会や社交会で履く靴達はどれも綺羅びやかで高飛車で、見た目に反して鎖で繋がれた重しのようだった。
だから、鎖を引きずってステップを踏むダンスは辛いものでしかなかった。



「すみれ、ダンスって楽しいのね!」

「…そうだね、リナリー」

(そっか ダンスって楽しいものだったんだ)



綺麗なドレスを身に纏い、荘厳な演奏の中で沢山踊ってきた。今はドレスとはかけ離れたファストファッションで、簡素な演奏で踊っている。だけど、


(私、今 すごく楽しい…!)


初めてダンスが楽しいと感じる事ができた。
そしてリナリーの笑顔が見れて「あぁ、ダンスができて良かったなあ」と思えた瞬間だった。



「リナリーのおかげで、私もすごく楽しいっ!」




/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp