第16章 覚えておいて
「ゴカイ?」
ラビは頭にクエッションマークを浮かべながら私の方に振り向く。
「例えば、ほら…と、特別な関係って、思われそう」
(例えば、そう 恋人 とか)
「いーじゃん」
「えっ」
「そう思わせておけば。…それにオレら、特別な関係だろ?」
ラビはニッと笑う。
「それって…」
どうゆう意味?と、言いかけようとしたところ
「すみれ!ラビ!」
「リっ、リナ、リナリーっ!?」
リナリーが物凄い勢いで私の胸に飛び込んできた。そのため私は勢い余って背面から転がりそうになる。
それもそのはず、彼女はダークブーツを発動させて飛び込んで来たのだから。びっ、びっくりした…!!
「遅いから心配したわ!」
「わ、本当!こんな時間だ!」
「結構時間経ってたんだな」
「遅くなってごめんね、リナリー!」
時計を見やれば自分が思っていた以上に時刻が進んでいる。リナリーが心配してしまうのも無理もない。
先程ラビの言う“特別な関係”とは何か聞きたかったが、自分の腰にきゅぅっと巻き付く可愛らしいリナリーを見ていたら申し訳なくなってしまい「ごめんね、リナリー」と抱きしめた。
……―――♪――♫♪―♫♫♪
すると、大広場から演奏が聞こえてきた。
「―――クラシック?」
何故だろう、少し懐かしさを感じる。
「何か催しがあるのかしら?」
「行ってみよーぜ!」
3人でそこへ足を運んでみると、輝かしい楽器を持った演奏隊が音楽を奏でていた。
大広場にいる人々は互いに手を取り、演奏に合わせてダンスを踊り出す。
「わ!楽しそう…!」
わくわくキラキラした目でリナリーはダンスを楽しむ人々に釘付けだ。
「素敵ね!私、こうゆうの見るの初めてっ」
興奮しはしゃぐリナリーは、いつものお姉さん風とは異なり年相応だ。
(そっか。リナリーは黒の教団で育ったから…)
このような人々の文化や生業に馴染みがないのかもしれない。
(今日ぐらいは、私が―――)
お姉さん風を、吹かせてもいいよね?
「…すみれ?」
「リナリー、御手をどうぞ」
私はリナリーに膝を付き、恭しくお辞儀する。
そう。お姫様にダンスをお誘いする王子様のように。