• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第16章  覚えておいて



「履いた感じはどお?立てるか?」

「うん、大丈夫だよ」


ラビは当然のように私の手を取りスクッと立たせてくれる。


「良かったさ!そんじゃ行こーぜ♪」


そして取った手を離さず、当然のように繋いだままの手を引いて歩き出す。



ラビのエスコートにどうしようもなくトキメイてしまい、某お伽噺のお姫様になったような錯覚に陥りそうになる。
しかし、残念ながら私はお姫様の役得ではない。



「…ごめんね、気を使わせちゃって」

「いーや、オレが欲しかっただけさ♪むしろ付き合ってくれてサンキューな!」

「お、お金!払うよ!」

「いや、いーって」

「いや、もうっ!悪いもん、色々と…本当にごめんねっ」

「そこはゴメンじゃなくて、“ありがとう”だろ?」

「え、でも、」

「ハイ!“ありがとう”、復唱!」

「あ…、ありが、とう?」

「どーいたしまシテ!」


よく言えました、と私の頭を再びポンポンと撫でる。あぁ、もう、本当…


「く、くやしぃ…っ」

「は?悔しいって、何がさ?」

「と、年上としての立場が、皆無すぎて…ッ」

「なんだソレ。笑」



違う。本当は違う。
ラビの、その手が優しいから。あの頃と全然、むしろもっと優しくなってて。


ちっとも成長してないバカな私は相変わらず、簡単にラビのことを“あぁ、好きだなあ”って思ってしまう。


でも、こんな風に扱われて、恋に落ちない女性なんているだろうか。




「せっかくの祭り事だし、楽しみたいじゃん?」


ラビは私の手を引きながら歩いているため、私に背を向けている。

良かった
私、多分、今。変な顔してる。



「前にさ、一緒にハロウィンしたじゃんか」

「、うん」

「オレ、スッゲー楽しくて。それからハロウィンとか、祭事とか好きなんさ」

「!、そうなんだ…」

「…すみれの、おかげ」



そう言って少し振り向いたラビの顔は、僅かにはにかんでいた。照れたような、でも楽しそうな年相応な男の子の顔をしていた。
そんな表情に、すみれの胸は心地よいむず痒さに痺れた。



「だから今日は楽しもーぜ!」

「うん……ありがと、ラビ」


お揃いの靴を履いた足達が、それぞれ歩幅を合わせて隣同士で歩みだした。





/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp