第16章 覚えておいて
湧き上がる感情に必死に耐えていたら、ハロウィンの仮装をした子ども達が私とラビの横をお構いなく通っていく。
「トリック・オア・トリート〜!」
「えー!お菓子ないよー!?」
「じゃあイタズラしちゃうぞ〜!」
わーわー、きゃーきゃーと無邪気に騒ぎながら子ども達が走り去っていく。
「か、かわいい…!」
「おっと、賑やかさね〜!」
可愛い子ども達に道を譲るため、ラビと道の端による。
「痛っ」
子ども達の愛くるしさに気を取られてしまい、靴擦れの存在を忘れていた。足をかばって歩く事を失念したため、痛みでフラついてしまった。
「大丈夫か?足、痛いんさ?」
「あ、歩きにくいだけだよ!」
実はだいぶ前から靴ずれの痛みを我慢している。
(可愛い靴って、こうゆう事多いよなあ。それにまだ履き慣らしてなかったから…)
今、靴擦れの状態は見たくない。
見たらもっと痛くなりそう…お洒落は我慢だ!
「ふーん…オレさ!もいっこ買い物してーんだけど、付き合ってくんね?」
「うん、いいよ」
「ほい」
ラビはそう言うと、手を差し出してきた。
「?、なに?」
「手、チョーダイ。ちょっと人通りも多いし、俺が迷子になりそうさ!」
「!」
違うよね、多分。
エスコート、してくれるってこと、だよね
「…うん、」
「サンキュー♪」
そろりそろりとラビに手を差し出すと嬉しそうに握ってくれて、私が歩きやすいように手を引いてくれた。
そうゆう、優しいとこ、ほんと…
「行こうぜ!」
人通りが多い街道へ向かって歩き出す。
日が傾きかけ、建物と建物の間に日が差しだした。日の光に向かって歩くラビは、私から見ると逆光で背中に影を纏う。
なのに、ラビの背中がとても眩しくて。私は目を細めた。
*
「…靴屋?」
「そ♪新しいのが欲しくてー!」
チョット待ってて!と、すぐそこにあった椅子に座らせられ、ラビの買い物を待つことになった。
「お待たせ〜!」
「えっ、早っ!もう買ったの?」
「おう!ホント定番なヤツが欲しくて」
そう言ってラビは袋から購入したばかりの靴を取り出す。
靴は本当に定番な流行り廃れのないデザインの、色んなファッションに合わせやすそうなものだった。