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49番目のあなた【D.Gray-man】

第16章  覚えておいて




以前ラビと過ごしたハロウィン、楽しかったな

…あの頃が、最後に幸せだったときかもしれない。




また暗い思考に陥りそうになって、リナリーに言われたことを思い出す。

『凄く思い詰めていそうな時がある』

ダメダメ、こんなんじゃまた気を遣われちゃうっ





「ト…トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃイタズラするぞー!」


自分の思考と纏う空気を変えたくて、無茶振りのような台詞を明るく元気いっぱいに言ってみた(ごめんね、ラビ)。


「ほい!」


すると目の前には黒猫の何かがあって、その美しさに只々目を奪われてしまった。


「……ありがと」


ラビから黒猫の何かを受け取ると、それは飴細工だった。
飴細工は今にも動き出しそうなくらい繊細に作られていて、それの瞳はラビと同じ翡翠色だった。


「……綺麗」

「だろ?思わず買っちまったさ」

「ラビからお菓子もらえるなんて思わなかったよ」

「え、トリック・オア・トリートとか言ったくせに?笑」

「うん 笑

…でも、本当、コレ。勿体なくて食べれないよ」


飴細工が美しいという理由だけではなくて。会いたいなぁと思っていたラビから貰ったという事が嬉しくて、勿体なくて食べられない。


「良かったさ!すみれ、ちょっと元気なさそうに見えたから」

「っ」

まずい
また気を使わせちゃう


「そっ、そんなんじゃ…っ」

「毎日、激務だもんな。ホント、あんま無理すんなよ?」

「わっ」

ラビはポンポンとすみれの頭を優しく撫でる。


「飴は、いつも頑張ってるすみれにご褒美さ♪」

「……うん」


罪悪感を感じる前に、ラビが私の暗い気持ちを掬い上げてくれた。


(ほんとに、もう…っ)


私の頭の上に乗っているラビの手が心地良くて、全神経が集中してしまう。


ねぇ、ラビ 知ってる?
女の子って、好きな人からの頭ポンポンって弱いんだよ

そんな私も 例外ではなくて



(好き、だなぁ…っ)



ひた隠していた気持ちが溢れ出す。


何でだろう、私、今。すごい泣きそう。
きっと情緒不安定なんだ、うん。
きっとそうだ。


悟られないよう、慌てて下を向く。
ラビの優しさと手のひらの温かさをずっと感じていたくて。
目と口をキュッつぐみ、涙とこみ上げてきた感情を押し込めた。


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