第5章 想う
「俺、品揃えの良い本屋知ってるさ!
辞典に関してなら使いやすいやつを探す手伝いもできるし。」
ディックに選んでもらうなら間違いない。
ふむふむと思い顎に手を当てる。
「それにすみれにいつも紅茶やお菓子も頂いてるしな。」
「それは私が飲みたくてしてるだけ!
むしろお世話になってるのは私だよ?」
そんなことを気に掛けてたなんて意外だった。
「日頃のお礼をしたいから、一緒に出かけよう?」
な?なんて、
首を傾げて可愛くお願いされたら断れるはずがない。
元々、断るつもりなんて微塵もなかったが。
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そして今に至る。
ディックはまだ来ない。
私が少し早く着いてしまった。
準備時間を多めに見積もりすぎてしまったのだ。
普段はドレスに袖を通し、髪はきちんと結い上げている。
急な来客に対応できるようにと叔母様に言われているため、ドレスばかり着ている。
しかし今日は違う。
ディックから『歩くからカジュアルな格好で!』と言われ服を着用している。いつもと着心地も異なるため浮足立ってしまう。
(変じゃ、ないかな…)
膝下丈でストライプ柄のシャツワンピース。
スカーフやベルト等を取り入れてアクセントに。
本屋に行くので歩く音が響かないよう、ローヒールの白いパンプスにした。
髪は緩く巻いてハーフアップに。
耳飾りは大振りのゴールドアクセサリー。
(というか私、気を使いすぎ!
相手はディックなのに…
しかも14歳の少年てーーー)
「お姉さん、1人?
ちょっと俺らと一緒にお茶でもしよ」
見知らぬ男性ふたりに声をかけられる。
考え事をしてたため、周囲の気配に気づかなかった。
「あ、連れを待ってるので」
すみれは笑顔で一歩下がる。
「じゃあ、そのお連れさんも一緒に!」
2人はズイっと距離を詰めてくる。
ち、近い!
「すみれ」