第5章 想う
ディックと出掛けることになった。
今は彼と待ち合わせ中である。
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呼び名を教えてもらってからしばらく経つ。
あれからも窓際のお茶会という名の勉強会は変わらず続いている。
買い直したほうが良いと言われた中英辞典もそのまま使用し続けていた。
「今日もお茶会はこのくらいにして、お終いにするさ。」
ディックは手にした文献をパタンと閉じる。
いつの間にか窓際の外に屋外用の椅子をちゃっかり設置している。使用後は窓際から離れなところに隠すように片されていた。
「もうこんな時間か。あっという間だねえ」
すみれは簡素な狭い机に所狭しに積み上げた本を片付けようと、椅子から腰を上げる。
一変に片付けようと多くの本を抱え込み過ぎて、1冊の本が床へ落ちた。
「あっ」
と、手を伸ばすも届かず落ちた瞬間
バサーーーーーーーーーー
落ちた衝撃で本の糸綴じが切れた。
1冊の本であった紙達がバラバラになり、床一面に散ってしまった。
「えー!!こんな壊れ方ある?!」
すみれは慌てて拾おうとするもページ数もバラバラになってしまい、どうしたものか。
「あちゃ〜。すみれ、やっちまったな…てか、これこの間の中英辞典じゃんか!そろそろ買い直した方が良いって言ったやつ!」
ディックは窓から顔を覗かせ、中英辞典であったそれを見る。
「だって、まだ使えたから。買い替えなくてもいいかなーて…」
「いやいや!情報は最新なものに越した事はないさ!それに、これじゃあもう使えないさね」
お嬢様なのに倹約家か!と言いながらページを一枚拾い、それをピラピラとさせている。
「うーん、流石に買わないとなあ。どんな中英辞典を注文しようかしら」
ついでに数学書も…と思案していると、ズイっとディックの顔が近づいた。
「すみれ!俺とデートさ!」
「は?」