第16章 覚えておいて
「もうすぐハロウィンだね!」
「そうさね。ハロウィンの出見世も多いさー!」
すみれと一番賑やかな大通りの方へ向かって歩き出す。
リナリーも買い物が済めばそちらへ向うと言っていたため、そろそろ合流できるだろう。
「ラビは本屋で…、へ…は、はくしょんっ!!」
「盛大にしたな 笑」
「うう"〜…日が沈みだしたから、冷えてきたねぇ」
すみれは鼻を啜りながら、露わにしている両腕を擦る。
「そんな薄着で来るからさ」
「わっ!?」
オレは団服を脱ぎボスッとすみれの頭から被せた。
「風邪引かれたらたまんねェーさ」
「えぇ!ラビが風引いちゃうよ!!」
「オレ寒くないから、着とけって」
あのちんちくりんファインダーと同じ事をしてしまい、なんか悔しい。
いや、そもそもこんな薄着で来たすみれがいけない。
「じゃあ…ごめんね、借りるね」
すみれは大人しく借りる事にしたようで、オレの団服に袖を通す。
言わずもがな団服は大きくて、肩のラインが合わずブカブカだ。袖からちょこんと出る指。
これはいつぞや流行った萌え袖状態になっている。
(か、可愛いさぁ!!)
オレの団服にすっぽりと包まれるすみれ。
せっかくのオシャレ着も隠れてしまったが、これはこれで男心を擽られる。
サイズがピッタリの自分の服が、彼女の小ささを浮き彫りにする。
ニヤけそうになる顔を抑え、そっぽを向く。
(ヤバいヤバい)
まーでもすみれの事だから、あのファインダーに言ったみたいに「機能性が〜」とか色気のないこと言い出すんだろうなーと思っていたら、
「大きいなあ、ラビの服…あったかい」
ちょっぴり頬を染めて、愛おしそうに団服の襟にスリスリと顔を寄せる。すみれは暖を取っているだけなのだろうが、オレの目からはそのように見えてしまう。
「ラビ、ありがと」
「……、おう」
辞めてくれ、すみれの匂いがついちまう。
オレが冷静にいられなくなる…!!
こんなありきたりの男女のやりとりなんて、飽きるぐらい何度もしてきたはずなのに。すみれが相手だとどうも調子が狂う。
ストライクとは違い、切なくキュンとしてしまう。どうしようもなくトキメイてしまう。