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49番目のあなた【D.Gray-man】

第16章  覚えておいて






「…夕方は冷えるさね」



巻いているマフラーを口元まで引き上げる。

昼間はまだ夏場の格好でも過ごせるくらい気温が高いのに、日が沈みかけると一気に寒くなる。

夏の終りと共に秋が訪れ、街道に立つ木々は紅葉し落ち葉の絨毯を敷き詰める。

先程購入した本を抱え、ヨーロッパの代表的な美しい街並みを歩く。ふと、子ども達が群がる屋台に目が留まった。



「いらっしゃ〜い!」

「ハロウィンの飴くださーい!」

「あたしはカボチャの飴!」


そうか、そろそろハロウィンの時期か


ハロウィンのモチーフで作られた飴細工が屋台を彩り、子ども達を引き付けていた。





「お兄さんも、お1つどう?」


繊細な飴細工を見ていたら、店員のオバチャンに声をかけられてしまった。

すみれとリナリーに買って、合流しよう。二人の買い物に割り込んでしまったし。


「ん〜じゃあ、白いオバケの飴と―――」



“白い” と “飴”

2つのワードでふと、修練場で見た事を思い出してしまった。







『団服、そこに置いておいて下さいね』

『あっ、ダグ!』


すみれが呼び止めるも、ちんちくりんのファインダーは振り返らず修練場の奥へ消えていった。


『すみれ〜♪』

『…ラビ、お疲れさま』


すみれは俺に話しかけられるも、名残惜しそうにアイツを目で追った。
羽織っているアイツの“白い”団服をそっと脱ぎ、そこにお礼のメモと“飴”を置いていた。







オレは自分が思っている以上に、すみれとアイツの関係が気になっているらしい。



「お兄さん、白いオバケと何にする?」

「―――いや、白いオバケは辞めるさ」



ファインダーの白い団服と被って見えた、なんて。何故か悔しくて、口が裂けても言えやしない。


「黒猫と、魔女の飴にしてほしいさ」


対価を払い飴細工を受け取り、団服のポケットに仕舞っていたら、



「ラビ!」

「お、すみれ!」

ひょこひょことすみれがやって来た。履き慣れないハイヒールのパンプスは少し歩き難そうだ。


…うん、今日のすみれはやっぱ格段に可愛いさ


軽口では言えるものの、本音としては口が裂けても言えねェって思うのは何故だろうか。




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