第16章 覚えておいて
男のロマンを詰め込んだコーディネートに、オレの下心が疼く。
柔らかそうな二の腕とか。胸とか腰とかヒップのラインとか。うるっとした目元とか唇とか。
普段とのギャップがあり過ぎて、スゲェくる。
このまま抱き寄せて、触れたい。
欲望のまますみれをめちゃくちゃにできたらーーーーーー
「ブックマンと神田の組手、ギャラリー多いね!」
「へ?あ、あぁ、そうさね」
すみれの声で我に返る。あっぶねー
「まぁ、ギャラリー多いのはあの二人のせいだけじゃなくて…」
こんな男ばっかのムサイ修練場に、良い意味で場違いの女がいたら。そりゃ皆気になるさ。
「今日は、デートでもあるんさ?」
思い切って聞いてみる。
もしかしてオレが知らないだけで、彼氏とか居たりして。
いやいや、すみれに限ってそんなことない……ない、よな?
「デート?誰が?」
「すみれが。気合入ってんじゃん」
「えぇ?!な、ないよ!」
「彼氏と行かねーの?」
「か、彼氏なんて…いない、し」
「ふーん」
気のない返事をするものの、内心は心底ほっとしている。彼氏なんて居たら泣いちまうさ。
「みんな騒いでんぜ?今日のすみれは可愛いって」
「もー、嘘ばっかし!」
(ホントは“今日は”じゃなくて、“今日も”可愛いさ)
俺は知ってた というか、とっくに気づいていた。
すみれは磨けば光るって事。
女は肌、髪、姿勢、仕草で決まると思う。
肌と髪が綺麗ならそれだけで好感度はグッと上がるし、姿勢と仕草が良くないとそれだけでザンネンになる。
素の顔やスタイルが全てではない。
え?オレが言うなって?
兎に角、今日のすみれは本当にキレイさ
「なあ、今日は非番なんだろ?」
「そうだよ」
「じゃあさ!オレの鍛錬も終わったし、」
デートしようぜ と、言いかけたその時
「ラビ!まだ鍛錬は終わっとらんぞ!!」
「ぐぇっ?!ジジイ?!」
ジジイに首根っこを引っ張られた。
「ちっと目を離すとすぐサボりおって!」
「えぇ!?まだやんの?」
「当たり前じゃ!」
「ちょ!首苦しーって!」
ちっこいくせに!どこにそんな力があるんさクソジジイ!?
「あはは。ラビ、いってらっしゃい」
オレはジジイに引き戻された。