第15章 繰り返すモノ
黒の教団に戻り、任務の報告をするため科学班へ顔を出す。
「あれ、すみれは?」
「あ、ラビ!医務室へ行ったよー」
「具合でも悪いんさ?」
「いや?気合入れに行くとか言ってたけど」
「……………またか」
すみれの奴。
きっと、“アレ”をしに行ったな
「いや〜ちょっと鼻血がね?出てしまいまして…」
「にんにく注射なんか打つからさ」
オレは冷たくズバッと吐き捨てる。
医務室からすみれを迎えに行き、その足で二人で食堂に向かう。
「ど、どうしても手を止める訳にはいかなくって…っ」
オレの不機嫌剥き出しオーラに慌てている。
すみれはまだ鼻を押さえながら言い訳を並べている。
その姿が、とても痛々しくて。
「ほんっと!いい加減にしろよな?」
「うう"……そ、そんなことより!任務、お疲れさま!
おかえりなさい、ラビ」
「……………おう」
「そこは『ただいま』、でしょ」
「そうさね」
なんだか気恥ずかしくて、その言葉を口にすることは出来なかった。
“ おかえり ”
(“いってらっしゃい”を、言われたときと同じさ)
むず痒いような、くすぐったいような。
胸がじんわりと熱くなる。
(ああ、きっと。以前から知り合いだからさ)
すみれのコト、好きだったし
一度惚れてしまった弱みに違いない。
(…あんなに必死に、すみれのこと忘れたのにな)
ずっと忘れていたのに、今は俺のすぐ隣にいる。
スゲェ変な気分。
オレはまだココで罪を償おうとするすみれを許せていない。
しかし、ココにいるすみれを求めている自分が居る。
仕方ねェだろ?
だってあんなに焦がれていたんだから
「傷ひとつなく帰ってきて、よかった!」
自分のことのように嬉しそうに言うすみれに、すっかり毒気を抜かれてしまった。
「すみれ」
「なに?」
「鼻血ついてる」
「…うそっ?!」
「ホラ」
隠そうとするすみれの手を退かし、優しく拭ってやる。
「うぅ"…恥ずかしいっ。ごめん、ラビに鼻血ついちゃう…!」
「いいって」
可愛い
色気皆無で疲労感を纏い、鼻血付けた間抜け面の女にこう思うオレって。相当ヤバいと思う。