第15章 繰り返すモノ
「はあ〜!やっと終ったあーっ!」
すみれは廊下を歩きながら、両腕を天井に向けて高く突き出す。
そしてそのまま「んん"ん"ーっ」と大きく伸びをした。
「いや、マジでヤベーから。医務室で仕事するなんて!」
「いや、その…解き方がひらめいてしまいまして…」
「しかもにんにく注射って!!ちゃんと休めって!!」
「えっ、私なんて良い方だよ?皆なんてコムイ室長が作ったヤバいにんにく注射打ってるからね?」
「ちゃんと医務室のモノを打ってもらってるし!」とすみれはエッヘンと胸を張って言う。
イヤイヤ 待て待て
そこは胸張るとこじゃねーから
「そもそもにんにく注射打ってまで仕事するなんて!どんな職場さ!?」
「こちらで御座います」
何かに取り憑かれたように死物狂いで仕事をする奴らと、その辺で死んだように寝コケる奴らが入り交じる職場ーーーーー科学班。
寝てるか仕事してるかのどっちか
初めて見た時はマジでびっくりしたさ!
「なあ、転職しよう?」
「…」
すみれはニコッと笑って誤魔化した。
「そういえば、ラビは医務室なんてどうしたの?怪我したの?」
「いーや、頭痛薬貰いに」
「え、頭痛いの?」
「痛くねぇさ。…まぁ、なんっつーか、お守り的な?」
「…そっか。これから初任務だもんね!備えあれば憂いなし、だもんね!」
「まーな」
「……怪我、しないでね?
いってらっしゃい!
帰ってきたら、任務の話聞かせてね!」
「……」
「ラビ?」
「…お、おう」
「うん!」
「ラビ、行くぞ」
後方から高齢者特有の嗄れた声でラビを呼ぶ声が聞こえた。ブックマンがラビに催促する。
(あの方がブックマン…)
ディ…じゃなくて、ラビが“ジジイ”って呼んでいた方だ。
すみれはブックマンに軽くお辞儀をし「いってらっしゃい」と挨拶をした。あちらも「ありがとう」とすみれに会釈をした。
「そんじゃ、行くさ」
「うん、気をつけてね!」
「この再会は吉と出るか、凶と出るか…」
「?、何か言ったさ?」
「何でもない、ひとり言だ」
ブックマンのひとり言は、廊下の暗闇に溶けて消えた。