第10章 トリック・オア・トリート《番外編》
「そんなの!もちろんだよ!」
すみれはパッと、俺の手をいとも容易く離す
(え、もう離すんか。
それも、こうもあっさりと!)
名残惜しく思っていたのは俺だけだったようで、すみれはニコニコとしている
(なんだよ、ちぇ…)
と、思っていたら
「トリック・オア・トリート〜!!お菓子くれなきゃ、イタズラするぞっ!」
すみれは爪を立て、ガオー!!なんて言っている。
いやいや、それは
「それじゃ狼だろ?!えーっと、ちょい待ち…」
「あ。私があげたお菓子なんて、駄目だからね!」
「え"」
「そんなの当たり前でしょうっ!」
すみれに釘を刺されてしまう。ポケットに飴玉くらいなかったかと、手を突っ込み探るも、何も出てこない。ポケットの中地を引っ張ってみるも、空っぽである。
「うふふふふっ。あれ〜ディック?何も無さそうね〜??」
すみれはニヒヒと、まさに魔女らしく嫌な笑みを浮かべる。なんなんさ、その笑顔は!
「くっ…!」
「ディックは“トリック・オア・トリート!”って、私に言う癖に、自分はお菓子準備しないんだね。笑」
「…まさか大人にたかられるとは、思わなかったんさ」
「こんな時ばっかり!大人扱いしないで下さい〜〜!」
俺がやれやれ、とポーズを取るとすみれは両腕を腰に当て頬を風船の様にぷぅっと膨らませた
いや、これじゃ本当にどっちが大人かわからんさ。笑
「ふっふっふっ!ではディック!覚悟ぉー!!」
「は?いや、待てっ…て!
ぎゃはっ、ぎゃははは!やめっ…そこはっ!っはー!」
すみれは容赦なく、ディックの脇を、腹を。思いっきりくすぐる。
「やめーっ!息がっ…ひいっ」
「お菓子が無いからだっ!あはは、は…
はっくしょい!!!!」
すみれは色気のカケラもない、盛大なくしゃみをかました。
「ぅ"〜…」
すみれは自分の両の二の腕を、何度も往復し擦る。俺はすみれのくすぐりからやっと開放された。
「あーあ。言わんこっちゃないさ」
「だって…」
「そんな薄着でいるからさ」
すみれの格好は、袖の無いミニワンピースに、蜘蛛の巣柄のすけすけ…ざっくりニット。
10月末にそんな格好では、寒いにきまっている。