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49番目のあなた【D.Gray-man】

第10章  トリック・オア・トリート《番外編》


すみれとティキが呆気にとられた一瞬の間に、ディックは二人の手を解いた。


「悪いさ、オニーサン



すみれは今日、俺の相棒なんさ」


ディックはティキに宣言するかのようにそう言い残し、ペロッと下を出す。


「んな…っ!」
ティキは、ディックの予想外の言動に、思わず面食らった。


グイッ

「わ…っ?!」

「行くさ、すみれ!」

そしてディックはすみれの手を取り、その場から駆け出した。






「あーあ〜。すみれと遊びたかったのにぃー!」

ザンネーンと言いながら、ちっとも残念そうな素振りの無いロード。ロリポップを舐めながらティキの様子を伺っていた。


「俺の負けだわ。油断した」

「ティッキーが、油断んんー?」

「そ。…あの少年、ただの子どもじゃなかったわ」

ティキはディックによって解かれた、すみれと繋がっていた手を眺める。


「今回ばかりは、見逃してやるさ」

「ふふふ〜。面白くなりそー!」


二人の口は、大きな弧を描く。
ロードはティキの腕に抱きつき、二人は人混みの中へ消えていった。

そんな会話をしていた事など、すみれ達はつゆ知らず。








「ちょ…ディックっ!」

すみれはディックに引かれるがまま、走り続けている。人混みの中を走っているにもかかわらず、不思議な事に誰ともぶつからない。

すみれはディックが発した、先程の言葉を思い出す。


ーーー“すみれは今日、俺の相棒なんさ”


その言葉を残し、自分をかっ攫うディックの姿に、トキメキと落胆する気持ちが相互していた。


ディックはいつも、ピンチというか、困った時に助けてくれる。しかも、相手をやんわりと制して。

(お世辞抜きに、カッコ良かったな…)


そして、この落胆する気持ちの原因は、“相棒”という言葉。
やっぱり、こんな年上の女は彼女候補にすらならないのかな。でも、助けてくれた時ぐらい、

(“彼女”って、言ってくれても良かったのにな…)


そんな2つの気持ちが、すみれの心の中を行ったり来たりしていた。


(そういえば、ティキに挨拶もなしに走りだしてしまった)

というか、それよりも。もう…ッ



「ディック…限界!!と、止まっ…」

止まってー!!!!

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