第10章 トリック・オア・トリート《番外編》
「え?」
不意に自分の名前を呼ばれ、顔を上げるとそこには、
「……ティ、ティ、ティっ!!
ティキ?!!」
「よう。とてもお楽しみなようで?」
ティキは私の姿を見て、ニヤッと笑う。
「っ!」
すみれは恥ずかしくなり、咄嗟に両腕で顔を隠した。
まさか!!こんな町中で!!
知り合いに合うなんて!!!
よりによって、ティキに会ってしまうなんて!!
何で、こんな有名な貴族であるティキが、街のハロウィンのお祭りに来てるんだろう?!!
「なん…っ?!ここに…っ?!」
「ん?あぁ、俺はお守りだよ。お守り。」
「ちょっとぉ〜!お守りってなに、ティッキ〜!!ボクの付き添いで、舞踏会のサボりでしょぉ〜」
「そうとも言う」
ティキの腕に少女が抱き付き、楽しそうにキャッキャッとはしゃいでいる。
なるほど。
ティキが街のお祭りに来るわけないよね。
だって、貴族達もハロウィンにかこつけて、お茶会やダンスパーティー等が開催されている。
ティキが誘われない訳がない。
「…知り合いの貴族に、会うなんて思わなかった」
「いやー俺も。ましてや、そんな魅惑な格好のすみれに会えるなんてなあ(笑)」
「は…ッ?!これは衣装だから!!仮装だよ、仮装!!」
「似合ってるよ、可愛い」
「っ!、」
お世辞とは分かっているものの、このように正面切って言われてしまうと、どうしても恥ずかしくなってしまう。
すみれは言い返す言葉が見つからず、ほんのり頬を染めるだけだった。
「ティッキー、この子がすみれー?」
「ん、ああ。そうそう。こいつはロードってゆーの。」
「ロードちゃん、改めてよろしくね。」
すみれはロードと目線を合わすべく、腰をかがめしゃがみ込んだ。
近くで見れば見るほど、ロードの美少女っぷりがよく分かる。
「ボク、すみれのこと好きだなあ〜♪ねえ、すみれ
ティッキーのお嫁さんにならないぃ?」
「!?、へっ…?!」
予想外の事を言われ、すみれは言葉を失った。
「だってボクぅ、すみれのこと好きだしぃ。ティッキーだって、すみれのこと好きでしょぉ〜?」
ロードはそう言うと、すみれの首に抱きついた。
あ、なんかいい匂いする…じゃなくて!