第10章 トリック・オア・トリート《番外編》
「えっ、俺も仮装すんの?」
「もっちろん!私だけなんて、恥ずかしいじゃない!」
「理由そこ?」
「…それもあるけど、ディックと一緒にハロウィンを楽しみたかったから!」
本当の理由は、ディックにハロウィンの楽しさを知って欲しかったから。
「黒猫のディック、可愛格好いいよ!服装とよく似合ってる♪」
「可愛…てか、服装はすみれにお願いされたから、要望通りにコーディネートしてきたんさ」
そうなのだ。
すみれはディックにとあるお願いをしていた。
*
『そうだね、じゃあハロウィンの日は一緒に出かけよう!』
『おっ!すみれも乗り気になってきたな♪』
『せっかくだもん。楽しみたいじゃない!
だから、当日はーーーー…
黒を基調にした服を着てきてね!』
*
「…なるほど、こういうことだったんか。」
「ふふふ♪よく似合って良かったあ!」
ディックは白いワイシャツに、黒いベスト。黒のスキニーパンツはブーツイン。そして黒いストールを巻いていた。
すみれに装着させられた猫耳と尻尾があれば、どう見ても黒猫だ。
ましてや、魔女とセットなら
「俺はすみれの、ペットの猫さね」
「ペットというか、相棒?魔女と言えば黒猫だと思って!」
ほら、街に行こう!と、すみれはディックの手を引いて歩き出す。街の方からは花火がドンッ、ドンッと上がったり、人々の賑わう声が聞こえてくる。
「やっぱり、お祭りはわくわくしちゃうね」
「俺、仮装なんて初めてさ!」
猫耳と尻尾なんて付けられて、ディックが嫌がるか少し不安だったが、楽しそうにしていて安心した。
「この間、仮装したことないって言ってたから、一緒にしたかったの」
「俺の仮装の準備まで、大変だったろ?」
「ううん、全然!
昔、お母さんが作ってくれた物だから」
「へっ?!そうなん?!」
「そうなの。ディックが付けてる猫耳、昔は私もつけてたよ!」
ディックは吃驚したかと思えば、わたわたと焦り猫耳カチューシャを外した。
「そんな大事なもん、俺が付けていいんさ?」
「…むしろ、なかなか使われる機会もないし、付けてほしいな!」
使ってあげて?とすみれがお願いすると「それなら…」と、ディックは自ら猫耳カチューシャを付けた。