第10章 トリック・オア・トリート《番外編》
10月31日、ハロウィン当日。
(…変、じゃないよね?)
すみれはディックとの待ち合わせ場所にて、何度も前髪をイジる。
(だって、今日はハロウィンだもの!)
ぐっと握り拳を作り自分自身を鼓舞するのも、何度目だろうか。普段はドレスばかり着ているが、今日はハロウィンの衣装を纏ってきた。
(それに、どうしても着たかったし…)
作った握り拳を、そっと解いて自分の胸に当てる。
(今日はハロウィンだから、仮装してる人なんていっぱいいる!)
再び、すみれは呪文を唱えだす。
大丈夫、大丈…「すみれ?」
ぶ
「わあああっ!」
「ええええ?!急になんさ?!」
心の準備が出来ていなかったため、すみれは思わず叫んでしまった。
「び、ビックリするでしょっ?!」
「普通に声かけただけし!それに今日のすみれ、いつもと違いすぎて、」
「っ!」
ディックはすみれを頭のてっぺんからつま先まで、何度も目線を往復させる。ディックが目を白黒させるのも仕方ない。今日のすみれは普段からは想像できない格好をしている。
今日のすみれは、
「…魔女、さ?」
「う、うん」
黒のミニワンピースに、頭には黒のとんがり帽子。クモの巣柄の黒のロングカーディガンに、パンプキンのトートバッグを持っていた
黒のミニワンピースはレース地で、袖なしタンクトップ。スカートの下には白いパニエを履いてボリュームを出している。
普段晒される事がない脚は、白黒ボーダーのニーハイソックスと、ショート丈のブーツを履いていた
(ディックの、視線が恥ずかしい…っ)
化粧も衣装に合わせていつもより濃く、ストレートな黒髪は毛先が少し巻かれ遊ばせていた
「へ、変だよねっ!でも、ハロウィンだしっ!ゆ、許される、よねっ」
ディックの視線に耐えられず、すみれは矢継ぎ早に言葉を発する
「変っつーか、」
「っ」
「…似合ってるさ」
「ほ、ほんと?」
ディックから発せられた台詞が、すみれの想像とは異なっていたので、思わず聞き返してしまった
「ほんと。可愛いさ♪」
「あ、ありがと…っ」
“可愛い”
ディックのその一言で、先程の私は何処へやら。舞い上がってしまいそうだ