第10章 トリック・オア・トリート《番外編》
「うーーん。…俺は仲良くなった奴と、街をぶらぶらしたくらいさあ」
「仮装した?」
「うんにゃ、してない。国や街を転々としてたし、ハロウィンの参加も飛び入りって感じだったさね」
「そっかあ」
ディックはおじいさんに、お家の事業について学んでいるらしい。
ディックから直接そのように聞いたわけではないが、よく「じじいが〜」と話しをしてくれる。
(…そうだよね)
ディックは忙しいから、あんまり季節の行事に参加する機会も少なかったんだろう
(また、他の国や街に行くのかなあ)
ツキン、とすみれの胸が痛む。
いやいや、そんないつかもわからないことを悩んだって仕方ない。
すみれは頭をふるふる振る。
今はーーー…
「ハロウィンって、収穫祭や先祖を迎える日だから、すげー賑やかじゃん?街をぶらぶらしてるだけでも充分楽しいさね〜」
「そうだね、じゃあハロウィンの日は一緒に出かけよう!」
「おっ!すみれも乗り気になってきたな♪」
「せっかくだもん。楽しみたいじゃない!
だから、当日はーーーー…」
すみれはディックに、とあるお願いをした。
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ーーーーーーー
「よいしょ、っと!ふう。確かここに…」
ディックといつもの勉強会兼お茶会が終わり、すみれはある物を探すため屋敷の倉庫に足を運んだ。
「あっ、あった!」
目当ての物は、だいぶ年季の入った段ボール。それを開けると
「わあー!懐かしいー!」
ハロウィングッズがわんさか出てくるではないか。
「ふふっ。いつぶりだろう、引っ張り出すの」
段ボールから年季を感じるものの、中身は一つ一つ丁寧に保管されていたため、年季は感じられなかった。
中身はハロウィンの置物や装飾品、母が作ってくれた衣装、ハロウィン用のレシピまで残っていた。
「この衣装、流石にもう着れないかなあ」
普段独り言は言わないが、懐かしさと楽しさで胸がいっぱいになり、感想が次から次へ口から溢れ出す。
「えっと、確か最後に着た衣装がこの辺に…」
段ボールの中をごそごそと探し出す
「あった、あった!…ディック、楽しんでくれるといいなあ」
すみれは必要なものを両手に抱え、部屋を後にする。ディックとハロウィンを楽しむために、準備に勤しむのであった。