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49番目のあなた【D.Gray-man】

第10章  トリック・オア・トリート《番外編》



ハロウィンを楽しむなんて、いつぶりだろうか。




両親が健在だった頃は、毎年この日を楽しみにしていた。

何日も前から、ハロウィンの装飾を沢山作って父と飾り付けして、家を彩った。旬の野菜や果物で、かぼちゃパイやクッキーを、母と料理した。料理できるようになったレシピが、毎年少しずつ増えていくのが嬉しかった。


何より嬉しかったのは、母が毎年私のために、手作りで仮装の衣装を作ってくれたことだった。


(お母さん、大変だったろうなあ)
一人で思い出し、ふふっと笑みが溢れる。


母の手で作られた衣装を着れば、当時の私は何にでもなれた。お姫様だって、魔女だって、苦手なオバケにさえだってなれた。ハロウィンの時だけは、オバケとも友達になれると思っていた。

それに、母が繕ってくれた衣装を着ると、家族が笑顔になる。


『お父さん、見て見て!!』

『おっ!お母さんに衣装作ってもらったか!今年もすごく可愛いぞ』

『よかったわねえ、すみれ』

『うん!お母さん、ありがとう!!』


最後に着た衣装は、なんだったっけなあーーー







「なあーに、1人でにやけてんさ?」

ひょこっ

ディックは、すみれとすみれが読んでいる数学書の間から顔を覗き込む。

うん、相変わらず距離感が近い…っ!

本当は顔が赤く染まるくらい恥ずかしいが、そろそろ慣れよう、私!

自分一人だけ照れるのは何だか悔しいので、数学の公式を思い浮かべ気持ちを落ち着かせる。

あ。
うんうん、いい感じ。





「…ん、昔のことをね。ちょっと思い出してたの」

「昔?」

「そう。小さい頃は、毎年ハロウィンを楽しんでたなあって。」

「へぇー、どんなことしてたん?」

ディックは自分の椅子に座り直し、窓枠に肘をつく。

「家中ハロウィンの飾り付けをお父さんとしたり、お母さんと料理したり。仮装もしてたよ!…楽しかったなあ」

すみれは目を細めてふふっと、再び笑みが浮かぶ。

「めっさ楽しそうさね!」

「うん!ディックはどんなことしてた?」



ディックは「うーんんん」と言いながら、上を見上げ唸る。
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