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49番目のあなた【D.Gray-man】

第10章  トリック・オア・トリート《番外編》


夏を感じさせる暑い日差しもなくなり、気がつけば鬱陶しく感じていた夏の風物詩である、セミ達の声も消えていた。


日中は半袖で過ごせても、夜は肌寒い。日も短くなり、夜はリーンリーンと鈴虫の儚い音色が聞える。


庭園に咲いている、金木犀の花の香りが書庫室まで漂い、胸いっぱいに秋の愁いを感じるティータイム時ーーーー




「トリック・オア・トリートさ〜!!」



…何故だろう、台詞は秋の一大行事なのに。

忘れかけていた夏を思い出させるかのように、太陽のように眩しい笑顔で、赤髪の少年が書庫室の窓から現れた。

すみれはティータイム用に準備した、クッキーが乗ったお皿をスッ…とディックに差し出す。



「………………ハッピー、ハロウィン?」

「………何で疑問系さ?」


そんな、とある日の出来事。




【トリック・オア・トリート《番外編》】






「いや、だって。“トリック・オア・トリート”って言うから」

はい、お菓子!と、すみれは極当たり前のように皿に乗ったクッキーをそのままディックに差し出す。


「いやいや、待つさ?だからって皿に乗ったクッキーで“ハッピーハロウィン?”しかも疑問系はねえさ!」

ディックは至極引いた顔で「ありえねぇさ!」とすみれに言う。


「いやいやいや、待って?まだ今日はハロウィン当日じゃないし、仮装もしてない人に突然“トリック・オア・トリート”って言われても、えぇ!?だからね?」


そうなのだ、今日はまだ10月の半ばだ。
街や一般家庭はハロウィンの装飾で彩られ、ハロウィンムードでいっぱいだが、まだ“トリック・オア・トリート!”と、言うのは早いだろう。

ディックは納得したのか、一人でぐぬぬ…っと唸っている。


「だから、お誘いに来たんさ」


ディックはすとん、と書庫室の窓側の外に置いてある自分専用の椅子に腰掛ける。

「お誘い?」

「そ!お誘い、さ。
10月30日は、俺とハロウィンしよ?」


「デートさ、デート〜♪」と鼻歌交じりに、嬉しそうに言うディック。

…私、まだ行くなんて言ってないのにな。


なんて思うものの、心の中では飛び跳ねて喜んでいる自分がいるのは秘密。




そんなこんなで、ディックとハロウィンを過ごすことになった。
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