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49番目のあなた【D.Gray-man】

第9章  終の始まりの鐘が鳴る



(…やめてくれ)


すみれの体からフッと力が抜け落ち、抵抗する様子がなくなった。すみれの瞳はガラス玉のようで、何も映していなかった。


「あれ?急に大人しくなったけど、観念した?」

「それとも、俺達と楽しむ気になったのかな」



男達の複数の手が、すみれのキレイな体に向かって伸びていく。


(……ッッ!!!)





ーーー“もう、ディックはいつもふざけて!”

何故、こんな時に



ーーー“ディックといると、楽しいよ!”

すみれと過ごした愛しい日々が、



ーーー“ねえ、ディック?”

走馬燈のように、頭の中で再生されるのか。



(……すみれ…)


傍観者であるのならば。
助ける義理なんか、無いのはわかっている。



……ーーすみれッ!!!


男達の摩の手が、スローモーションのようにすみれに伸びていく。



さわるな


すみれに、さわるな!!!!!


ディックは無我夢中で、物陰から飛び出した。



ドカッ バキッ


ドサドサッ



一瞬で男達を伸し、すみれから遠く離れた庭園に向かって投げ飛ばした。


(はあ…はあ…ッ)



気がつけば、ブックマン後継者とか、傍観者であることとか。そんなこと、頭の片隅にもなくなっていて。


ただ、すみれが傷つくところを、見ていられなかった。

ただ、それだけだった。





いや、もう遅かった。



「だいじょーぶさ?」




「ディック……っ!!」


ツキンッ

すみれの震えた涙声が、ディックの心を突き刺す。


…ごめん



「怖かったろ、もう大丈夫さ。」


ディックはなるべく優しい声音で、すみれを抱え起こす。すみれは言葉を発しようとするも、唇がわなわな震えるばかりで、何も発することが出来なかった。


ズキンッ


そんなすみれの姿が、ディックの心を今度は鋭く、そして深く突き刺す。



直ぐに助けなくて、ごめんさ…ッ!!!



すみれのそんな姿が痛々しくて、ディックは力いっぱいに抱きしめた。

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