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49番目のあなた【D.Gray-man】

第9章  終の始まりの鐘が鳴る


ブックマン後継者であることを、悔いたことも、嘆くつもりもない。

ただ、すみれと絶対に交わる事が無い世界にいることを、自覚させられただけさ。


そんなことを物陰に隠れて、ぼんやり考えていると






「やあ!1人かな?」

「僕達と踊らない?」

男性二人が、バルコニーで休憩しているすみれに声をかける。

「あ…ちょっと、気分が優れなくて」

「それはいけない!大丈夫?」

男達はすみれの側に寄り、一人はすみれの肩に、一人はすみれの腰に手を回す。

(な"…っ)
男達の行動に、ディックは目を見張る。思わず声が出そうになった。


「…っ!大丈夫、ですのでっ」
すみれはやんわりと、男達の手を払う。が、

「まあ、そんなこと言わずに」
「こっちおいでよ?」

すみれはじりじりと、男達に距離を詰められていく。男達はフレンドリーそうな笑みを口元に浮かべているが、仮面の奥の瞳にディックは気づく。

こいつら…!!


色欲に塗れた、獣の目だ。


(ーーッすみれ!)


すみれも不穏な気配を感じたのか、ドレスが翻ることも気にせず一目散に走り出す。「おい、待て!」と男達がすみれの後を追いかける。


(ッ馬鹿!そっちは暗がりさ…!)


すみれは仮面舞踏会の華やかな明かりとは逆の、暗い庭園に向かって走る。

ディックはすみれを助けるため、慌ててすみれの後を追ーーーーーー





後を、追う?

俺は今、ブックマンとして仕事をしている。

ブックマンは傍観者だ。
傍観者が様子見の相手とはいえ、仕事中に記録対象者に手を差し伸べる?


そんな事は、有り得ない。


「…んなこと、わかってらッ」


もしかしたら、すみれを助けに誰かが来るかもしれない。それが歴史を動かすキッカケになる可能性だって…

無いとは、言えない。


「…ッ」

ディックがその場から動けずにいる内に、男達は簡単にすみれに追いつき、嫌がるすみれの腕を掴む。

(……やめろ)


「はっ、離してっ」
「はは、自分から暗がりに行くなんて。


誘ってるの?」


そんな訳ねぇだろ

(…やめろ)


ドサッ

すみれは男達に押さえつけられ、手入れされた芝生の上に倒された。
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