第9章 終の始まりの鐘が鳴る
(すみれ、何してっかな…)
そんな事を考えながら、ベッドの上でゴロゴロしていた。ら、
ザシュッ
「いってぇぇぇ!!!」
「バカ者め!お前の耳は飾り物か?」
アイメイクが独特の、パンダ…じゃなかった。現ブックマンのジジイに、突然頭を叩かれる。
「いきなし何すんさ?!」
「いきなしじゃないわ!!何度も呼びおったのに、気づかん奴がいけんわい!」
気が緩み過ぎじゃ!と、ジジイはプンプンとお怒りだ。
「へ?俺のこと呼んだの?」
全然気づかんかったわ…と、ディックは叩かれた頭を擦る。
「言いつけた記録は、済んだのか?」
「とっくに終えたさー。」
だからダラダラしてたんさ〜と、ディックはブックマンに憎まれ口を叩くのは、いつものやり取りだった。
「そろそろ、じゃ。」
突然、空気がピシッと張り詰めたものに変わった。
「え?」
ディックは頭を擦るのを辞め、ブックマンに視線を向ける。
「そろそろ、本格的な記録が始まる」
その言葉を聞き、ディックはピタッと静止してしまった。記録が始まる、ということは
「近々、戦争が起こるだろう。」
そんな事。
言われる事は初めっから、わかってたのに
「心してかかれよ。」
ズキッ
「…ああ。」
(ズキッて、すんなさ…ッ)
何故、俺の心は痛むのだろう。
ディックは髪の毛をグシャっと掻きむしる。
「おそらく、近々彼女の側でも、戦争の火種が上がる可能性があるだろう。…今まで通り、様子見を頼んだぞ。」
「…………ああ。」
「…波風立たぬように、せぇよ。」
ブックマンはそれだけ言い残すと、仮部屋から静かにパタンと音を立て出て行った。
(クッソ、ジジイの奴。)
どこまで、俺の心を知ってんだろ。
ディックは再びベッドへ体を放り投げる。ベッドはギシッと音を鳴らし、ディックの体を沈めた。