第9章 終の始まりの鐘が鳴る
(これは、罰なのかもしれない。)
悲しみと 恐怖と 羞恥と
絶望と。
すみれの体から、フッと力が抜け落ちた。体はどんどん冷たくなり、硬直していく。
(そっか、罰なのか…)
別に、初めてではない。
男の人と、触れる事も。
体を重ねる事も、初めてではない。
(私が耐え忍んでいれば、終わる)
でも、やっぱり
好きでもない人と、ましてや見ず知らずの男達に蹂躙され、無理やり行為に及ばれることは…
「あれ?急に大人しくなったけど、観念した?」
「それとも、俺達と楽しむ気になったのかな」
男達の、複数の手がすみれの体に向かって伸びる。
「……ッッ!!!」
これから及ぶだろう行為を想像すると、恐怖で息が止まってしまいそうだった。
すみれは顔を背け、目を固くギュッと瞑る。それがすみれの出来る、男達に対する精一杯の抵抗だった。
目を瞑った時、脳裏に浮かんでしまった。
ーーー“すみれは真面目さね〜!”
燃えるような赤髪と、
ーーー“こんな貴族令嬢、すみれだけさ”
翡翠色の隻眼と、
ーーー“なあ、すみれ!”
太陽のように笑う、ディックの顔。
(……ディック)
助けてもらえる資格がないなんて、知ってる。
(……ディック!)
どうしてこんな時に限って、彼の顔が浮かんでしまうのか。
(たス け、テ)
何故か今更、目に涙が溜まっていく。
愚かにも、ここにはいないディックの助けを願ってしまった。
顔を背け目を固く瞑っているため、男達の摩の手は見えていないが、スローモーションのように近づいてきていることを感じた。
目を瞑った暗闇の中で、温かい光を放つディックに手を伸ばす。
手が届かないことを、知りながら。