第9章 終の始まりの鐘が鳴る
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私は、どうしたら良いのだろう。
考えなければいけない事が多すぎて、わからない。
色んな情報を知りすぎて、頭も気持ちも追いつかない。
夜空を見上げると、そこには満天の星達が瞬いている。
(私って、なんて薄情な人間なんだろ)
人を犠牲にしているかもしれない事を
頼れる家族なんて存在しなかった事を知って
(涙1つ、出ないなんて…)
このまま 消えてしまいたい
「やあ!1人かな?」
「僕達と踊らない?」
突然、背後から男性二人の声が聞こえた。
すみれは咄嗟に、仮面を被り直す。
「あ…ちょっと、気分が優れなくて」
「それはいけない!大丈夫?」
男達はすみれの側に寄り、一人はすみれの肩に、一人はすみれの腰に手を回す。
「…っ!(な、なに?!)大丈夫、ですのでっ」
すみれはやんわりと、男達の手を払う。が、
「まあ、そんなこと言わずに」
「こっちおいでよ?」
すみれはじりじりと、男達に距離を詰められていく。男達はフレンドリーそうな笑みを口元に浮かべているが、仮面の奥の瞳に気づく。
笑って、いない。
「ーーッ!」
タッ
すみれは怖くなり、ドレスが翻ることも気にせず走り出す。「おい、待て!」と後ろから男達の声と、追いかけられている足音がする。
(はあっ はあっ)
すみれは仮面舞踏会の華やかな明かりとは逆の、暗い庭園に向かって走る。しかし、男達は簡単に追いつき、すみれの腕を掴む。
「はっ、離してっ」
「はは、自分から暗がりに行くなんて。
誘ってるの?」
ぞわあ、と鳥肌が立った。
ドサッ
男達に押さえつけられ、手入れされた芝生の上に倒される。すみれは恐怖のあまり、声を出すことができなかった。
(た、たす…!!)
助けて!!と、思った瞬間。
脳裏に過ぎったのは、
助けてくれる家族なんていなかった事と、
“危ない事業”で命を落としたかも知れない、人々の顔ーーーーーー
ああ
助けて、なんて
言えないや。