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49番目のあなた【D.Gray-man】

第9章  終の始まりの鐘が鳴る




ドカッ バキッ





ドサドサッ





「…っ?」

ふと、急に男達に覆い被さられていた体が、軽くなった。すみれは恐る恐る目を開けると、少し遠くの方で男達が倒れていた。





「だいじょーぶさ?」

夜空から降ってきた声は、




「ディック……っ!!」


ディックはすみれを抱き抱え、起こしてくれた。



「怖かったろ、もう大丈夫さ。」

すみれは言葉を発しようとするも、唇がわなわな震えるばかりで、言葉を何も発することが出来なかった。


(ディック…)


助けてくれて、ありがとう。
すごくすごく、怖かった。


(ディック…!)


でも、私は助けられる資格なんて、これっぽっちも無くて。



「ディック…!!」


すみれの瞳から、今日初めて一筋の雫が流れる。一度流れてしまった涙は止める術も無く、次々と溢れ出す。



(あんなに怖い思いをしたのに。助けてもらえて嬉しかったのに。涙は止まらないのに。


……冷静な自分が嫌になる。)




すみれを抱き締めてくれている、ディックはいつもの子息の格好ではなく。



マントを羽織り、履き慣れていそうなロングブーツと、ラフな格好。

それはまるで、旅人のようだった。




使用人になったり、貴族になったり

旅人に、なったり



「…ディック」

「ん…?」



「ディックは、何者なの?」



私は、これからどうなるの?



ディックはすみれを抱き締めている腕を緩み、すみれの肩を抱く。

顔を合わせると、悲しみを隠したディックの歪んだ笑顔があった。





「知る覚悟は、あるさ?」








ボーン ボーン

ボーン ボーン








午後12時。


仮面舞踏会の終わりを告げる、鐘が鳴り響いた。


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