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49番目のあなた【D.Gray-man】

第9章  終の始まりの鐘が鳴る



あれから自室に戻ったものの、どのように戻ってきたか、あまり覚えていない。


しかし、叔父の書斎に入った痕跡は残してないはずだ。







(…知られるわけには、いかない)


私が知ってしまった、という事を。






(それに…まだ……)


全てが、事実ではないかもしれない。


“危ない事業に手を出した”ーーーーー


(まだ、確実とは言えない。)






そんな淡い期待を抱き、すみれは自分自身を抱き締めるかのように、ギュッと両腕を掴む。

確実ではないのであれば、調べなければ。

しかし、これ以上どのように調べれば良いのか、案が浮かばず行き詰まっている。




ボーン  ボーン



振り子時計が、午前12時の鐘を鳴らす。



もう昼食の時間だ。
昼食は叔父と叔母の3人で食べる約束をしている。食欲なんてこれっぽっちもなかったが、断って不思議がられたくない。


「大丈夫、大丈夫…」


いつも通り、振る舞える。


自分自身に呪文を唱えるかのように、何度も何度も繰り返す。そしてすみれは叔父と叔母の元に向かうのであったーーーーーーー



* * *




カチャ カチャ…


すみれは必死にナイフとフォークを動かす。しかし、なかなか食べ物がのどを通らない。

叔父と叔母の会話の内容もあまり耳に入らず、相槌と“yes”を繰り返すばかりだ。




「食事が進んでいないが、食欲がないのかい?」

叔父に指摘され、すみれはハッとする。



「お、お昼に紅茶を、飲みすぎてしまって…」

叔父と叔母の顔を見ることが出来ず、俯いたまま応えてしまった。



「そうなのかい?体調が悪いのかと思ったよ」

「びっくりさせないで、今晩は舞踏会に行くのだから。」

(あ、あれ?そんな話したっけ…)

仮面舞踏会の話題に花を咲かす、二人の顔を見る。




「そうだねぇ。〇〇公爵の招待だから、よっぽどの理由がない限りはねえ。」


この笑顔こそ、仮面なんだろうか。



「仮面舞踏会!趣きがあって素敵じゃない!」


この食事をしている材料は、 資金は






亡くなった 人の、おかげ でーーーーー


「……ッ」



あの光景を、



屍の上に立つ自分の姿を、再び想像してしまった。





吐き気が、した。



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