第9章 終の始まりの鐘が鳴る
すみれは叔父叔母の養子になっているのだから、名字は今のものになるはずた。
(法律上、私が未成年で遺産を管理できない年齢だから、“未成年後見人”が叔父なのはわかるが…)
あれ
“未成年後見人”?
すみれは、ある日のディックとの会話を思い出した。
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「すみれは、スッッゲー倹約家さね」
ディックは窓枠に頭を垂れながら、「貴族令嬢なのにー笑」と言っている。
「だって、私のお金なんて無いもの。無闇に使う訳にはいかないじゃない」
「…こんな事言うのもアレなんけど、両親の遺産もらってるだろ?」
「ううん。そんな話は聞いた事ないよ」
「まあ、すみれはまだ未成年だからな!きっと叔父が代理人になって遺産管理してるさ。」
ディックの口調はまるで、
「自分は未成年ジャナイ」と言ってるように聞こえた。
「(いやいや、思いっきり未成年だからね。)
………ふーん、そういうものなの?」
「…何か言いたげなのは、気のせいさね?
法律上、未成年の遺産管理は親権のある大人が“代理人”になって行うさー」
「へぇー。」
「ちなみに!親権のない大人は“未成年後見人”って言ってぇ〜」
「ふぅーん。…あっ、ディック!ここの言語なんだけど!」
「ちょーっと待つさ!?俺、けっこー大事なこと言ってんだけど!?」
聞けよ〜!と、嘘泣きで言っているディックに、すみれは適当に「はいはい」と笑って相槌を打った。
……
…
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(あれ)
(あれ あれ?)
すみれの体がカタカタと小刻みに、通帳を持つ手はブルブルと震える。
“未成年後見人”ということは、
叔父には私の親権が
無いってこと?
(私、)
(私って、)
叔父様と叔母様の、
子どもじゃないってこと?
ーーーーーー養子じゃ、ないの?
頭が 真っ白になった