• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第9章  終の始まりの鐘が鳴る


扉には鍵が掛かっていなかった。


たまたまなのか。
それとも、絶対に立ち入られない自信があったのか。

(少なくとも、私が勝手に入るとは思ってなかっただろうなあ…)

ギィィ…



書斎兼仕事部屋の扉は、簡単に開いた。
南向きの窓から差し込む朝日が眩しい。


叔父のデスクへ近づくと、仕事の経理関係のものや、地方新聞や顧客リストが散乱していた。


すみれはまず、経理関係書類へ手を伸ばす。決算書を見れば、お金の動きがわかるはずだ。


「………っ」


数字を何度も確認するも、売上や資産状況は良いとは言えなさそうだ。





“事業が上手くいっていない”



残念ながら、その噂は本当のようだ。
損益通算書を見ると、損があまりにも大きい。その内訳を見ると、施設費やら接待費等が大半を占めていた。

すみれには思い当たる節があった。


(この損は、おそらく…)


二人の金遣いの粗さだろう。


ここ数年。
仕事の必要経費と言いつつ豪華な調度品を購入したり、接待と言いつつ豪遊したりしていたのは、すみれの目から見ても余るものだった。


(事業を疎かにしてたんだ…)


二人の金遣いが酷くなった頃から、資産や売上が伸び悩んでいるようだ。
思わず、手にしている書類等をギュッと握りしめてしまいそうになるが、何とか抑える。


しかし、事業の売上を遥かに超える、巨額な振り込み金の記録がある。

(この巨額な金額は…?)
事業とは別の資金のようで、詳細がイマイチだ。


何か手掛かりを見つけるために、すみれはゴソゴソと叔父の机の上、引き出しを漁り出す。

ある引き出しを開けると、そこにいくつかの通帳が存在していた。1つの通帳に目がとまる。


すみれの、名前のものがあった。

「えっ、どうして…?」


何故なら、その名前は




“柳 すみれ”


すみれの両親が健在だったときの、名字の名だった。

そしてもう1つ驚いたのが、通帳の表紙にすみれの名とは別の名前があった。それは叔父の名前で、叔父の名前の前に書かれていた、



“未成年後見人”


という、言葉。

どうやらこの通帳は、すみれが両親の遺産を相続した資金の通帳のようだ。
しかし何故、すみれの名字が以前のものなのか。
/ 355ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp