• テキストサイズ

その秘密は図書室にて

第3章 歪んだ関係


中学生になった由香里は、友達と"自分自身"を作ることに優先した。
いじめグループとも瞬とも学校が別れたため、中学ではいじめられることはなかった。
お喋りでイケメン好き。人間関係の情報が早い。
いつしか、そのキャラで自然に溶け込んでいた。
自分では到底手の届かない人を好むのは、一種の防衛反応だ。
それならば、あの時のようなことは起こらない。
瑞希に声をかけたのもその時だ。
あの時は人見知りでちょっと地味なような印象しかなかった。こういう子と一緒にいた方が楽かな、などというくらいで。
実際、そうじゃなかったことは由香里が1番よくわかっている。それと同時に不安になる。
こんな私でも彼女は私を友達だと思ってくれるのか。
だから距離をとろうとした。そしてまたあの時みたいに突き放そうとしてしまった。
もう、あんなことはしたくない…。

------

「…悲しい顔?」
自分ではどんな顔をしているのかわからない。
瞬は続ける。
「嫌いならそんな顔するなよ。だから俺も……っ!
………もう俺には由香里に許してもらう資格なんてないんだろうけど」
「それは違うっ!!!」
由香里は反射的に声をあげた。
「資格がないのは私。瞬は私のことを思って、向き合ってくれようとした。…なのに私が、私」
「もういい」
瞬は由香里の腕を引くと強引に抱きしめた。
そのまま由香里の耳元で言う。
「俺はまた、歪む前のあの時のような関係に戻りたい」
「うん、私も」
窓から射し込む夕日が2人を優しく照らしていた。
/ 46ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp