第3章 歪んだ関係
「…そんなこと、ないんじゃないのかな」
「えっ…!?」
瑞希が弾かれたように顔を上げるのを見て、こんなことを言った自分に動揺する。
「樫野さんは、倉本さんに迷惑をかけたくないだけじゃないのかな」
瑞希が俯く。
悠弥はそんな瑞希を安心させようとにこっと微笑む。
「そんなこと…」
「きっとある。明日本人に聞いてみればいいし。…仲直り、するでしょ?」
顔を上げた瑞希がこくりと頷く。
「じゃ、とりあえず今俺が出来るのはここまでだから…」
瑞希の頭にぽんと手を置く。
「頑張れ」
「うん…!!」
微かに頬を赤らめた瑞希がぺこりと頭をさげた。
「ありがとう…なんかちょっと、安心した」
「それならよかった」
悠弥は部屋を出る瑞希を見送った。
1人取り残された悠弥はふぅと溜息をつく。
何故自分はこんなことをしたのだろう。
あれほどまで人と親しくなるのはやめようと思ったのに。
それも女子に。
悠弥は自分の手を見つめる。
小柄だとは思っていた、でもそれ以上に華奢で小さかった体。
本の話をすると花が咲くように笑う顔。
悠弥は首をふる。
「最近おかしいな…」
苦笑まじりに呟いた。