第3章 歪んだ関係
結局、放課後になっても由香里は教室に戻ってくることはなかった。
瑞希といえばその後の授業全てを上の空で受けた。
『来ないで!!!』
あんな由香里は中学から一緒だった瑞希も初めて見た。人に対する感情をあらかさまに出すことはない、由香里はそんな人だった。
なのにあそこまで声を荒げて…。
「私……」
「倉本さん!!」
顔を上げると堀口くんが走ってきて、瑞希の手首をギュッと掴んだ。
「えっ、ちょっ……」
「図書室、行くよ」
そのまま引っ張られる形で図書室に連れていかれた。
図書室に着くと、今日は2、3人勉強している人がいた。瑞希達には気付いていないようだ。
悠弥は瑞希の手首を掴んだままカウンターの奥の部屋に連れていく。
「ちょっ…!」
ドアを閉めると、瑞希はいきなり抱きしめられた。
「!!!!!」
心臓が鳴る音が瑞希の体をこだまして、顔が火照るのが分かる。体が熱く、声を出すことも出来なくなる。
ふと、背中に回っていた手が瑞希の頭にぽんっ、と乗った。
「吐き出したいものがあるなら、吐き出した方がいいよ」
「…………っ!!」
その優しい声に、堪えていた涙が溢れでた。
「……うっ…うっ…」
悠弥の手は、まるで小さい子をあやすかのように優しく暖かかった。
しばらく、瑞希は悠弥の腕の中で泣いた。