第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
途中、エンデヴァーさんの喜びの叫びが聞こえてきたが、二人は全然聞こえていない様子だった。私も正直二人の試合に集中していて全然気づいていなかった。
「すご…」
「何笑ってんだよ。その怪我でこの状況でお前…イカレてるよ」
「どうなっても知らねぇぞ」
右氷結と左の炎を同時に放つ轟くんと、全身を使って個性を使用しようとする緑谷くん。両方ともこれで決着をつけようという意志を感じられた。
「ミッドナイト!さすがにこれ以上はもう!」
「彼の身がもたない!」
審判の先生方へ向く暇もなく、二人を見つめる。
特に轟くんの右の氷と左の炎は、相反するものの物質同士だけど、だからこそ二つの存在が引き立ち、より美しく感じた。
(これが…轟くんの個性なんだね。)
改めてそれを実感し、今までの彼を思い出すと無意識のうちに涙が溢れていた。
それ以降は、お互いの限界突破のぶつかり合いだった。一言では表しきれないほどの壮大感があった。
「緑谷…ありがとな」
最後の一騎討ちの反動はあまりに大きく、ステージ会場がその影響で熱風が覆われていた。
「威力が大きけりゃいいってもんじゃないけど…すごいな」
《…お前のクラス何なの?》
《散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ》
《それでこの爆風ってどんだけ高熱だよ!ったく何も見えねぇ!オイこれ勝負はどうなってんだ!?》
(‥‥どうなったの?)
熱風による煙の中、徐々に会場の様子が見え始める。最初に見えた緑谷くんは一見立っているように見えたが、場外ラインを越えていた緑谷くんは意識を失ったまま、そのまま倒れてしまった。
「み…緑谷くん場外!轟くん3回戦進出!」
勝敗が宣言され、この試合は終了した。
観客の余韻も冷めやらぬなか、緑谷くんへの評価が聞こえてきた。攻撃するたび傷ついていく点に関して賛否が分かれているようだった。
「轟のあの個性もすごかったけど、緑谷のパワーすごかったね。まあ賛否あるのは仕方ないけどさ、」
『違うよ…』
「ん?」
『緑谷くんはただ…轟くんを救う一心で‥‥』
言っても仕方ないのは分かっているけど、彼らの事情を考えるとつい物申したくなってしまった。それほど凄い事が緑谷くんと轟くんの間にあったという事を私は知っていた。