第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
よく見たら緑谷くんの折れた人差し指が更に変色されていた。あまりの出来事に空いた口を塞いだ。ただでさえ痛みが伴う彼にとって傷口に塩を塗るような行為でもあるのに....
それ程この試合に勝つつもりなのだろうが、それだけではない気がした。
流石の轟くんも緑谷くんの行動に驚いてるみたいだった。
「てめぇ…壊れた指で!何でそこまで…」
「震えてるよ轟くん。個性だって身体機能のひとつだ。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう?それって左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないのか?」
「……。」
ではあの震えは個性を使いすぎた故の警告サインだったという事か。
「みんな本気でやってる。勝って目標に近付くために…1番になるために…半分の力で勝つ!?まだ僕は君に傷ひとつつけられちゃいないぞ!全力でかかって来い!!」
そう言って折れた拳を握り締める姿に思わず目が離せなかった。緑谷くんにも譲れない思いがあると共に、純粋に轟くんに戦ってほしいという気持ちが伝わってきたからだ。
緑谷くんはもしかして轟くんを理解し分かち合おうとしてるのかもしれない。そんな事が思い浮かぶ中、
「全力?クソ親父に金でも握らされたか?イラつくな!」
轟くんは直接攻撃すべく距離を詰め始める。しかし動きに反応して緑谷くんの拳が直接腹部に当たった。
「しない!」
《モロだァ!生々しいの入ったァ!!》
しかし攻撃の反動による痛みを耐えながら、不安定な体制を取っている緑谷くんは見るに堪えないものがあり、流石に審判の先生方も彼の様子を伺っているみたいだった。
轟くんの氷の威力も徐々に弱まり始め、双方とも体力的に限界が来ている感じがした。
「SMASH!!」
そんな中、折れた指を口に銜えた状態で攻撃を仕掛ける緑谷くんからのオーラは圧巻で、ただただ驚かされていた。
「ぐっ…何でそこまで…」
「期待に応えたいんだ!笑って応えられるようなカッコイイヒーローに…なりたいんだ!!」
一瞬表情が変わったような轟くんだったが、その瞬間緑谷くんの一撃を食らう。
「だから!全力で!やってんだみんな!」
そう言って叫ぶ緑谷くんの姿は心を揺さぶられるものがあった。