第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
上鳴くんと塩崎さんの試合は、思いのほか一瞬で終わってしまった。相性の問題もあってか、ツルを使う塩崎さんがリードしていた。
また、飯田くんとサポート科の発目さんの試合。こちらは他の試合とは毛色がまったく変わり、彼女の発明品(ベイビーたち)をヒーロー事務所へプロモーション活動しているかのような内容だった。
(発目さん、相変わらずすごかったな…)
結果的に飯田くんが勝利して終わってしまったが、飯田くんは納得できていない様子だった。
次々と試合が行われる中、最終種目の1回戦も後半に入っていき、残すところ麗日さんと爆豪くんの番のみとなった。それが終わったら、すぐ2回戦になり轟くんと緑谷くんの試合が始まる事になるだろう。
(‥‥もうすぐなんだ、)
本当に時間というのはあっという間だ。轟くんの事も気がかりだが、その前に麗日さんの試合を見てからだ。
《第1回戦最後の第8試合!中学からちょっとした有名人!堅気の顔じゃねぇ!ヒーロー科爆豪勝己!VS俺こっち応援したい。ヒーロー科麗日お茶子!》
「お前浮かすヤツだな丸顔」
「まるっ…」
「退くなら今退けよ。「痛ぇ」じゃすまねえぞ」
(麗日さん…)
相手が相手だ。恐らく女性相手にも容赦なく個性を使う気がする。麗日さんはそんな相手の中どういう風に戦うのだろうか。
《第8試合スタート!》
「退くなんて選択肢ないから!」
笑顔が印象的な彼女とは一変し、正々堂々と戦うその姿は、ヒーローを目指すに値する姿だった。
「じゃあ死ね!」
爆豪くんの動きを読んでいたかのように麗日さんが爆豪くんの右手に反応する。にも関わらず、反応が追い付けないほどのスピードで個性を使う爆豪くん。
「片付けてやる。ナメんじゃねえ!」
黒い煙幕で視界がよくない中、麗日さんは彼女の上着を利用して背後から彼に触れようとしていた。しかし、
「おっせえ!」
反応速度が尋常じゃない爆豪くんは、すぐに背後にいる彼女を察し、彼の爆破の個性を使って彼女を吹き飛ばしてしまう。
「おらああ!!」
それでも麗日さんはめげずに立ち向かっていく。彼女の掛け声と共に爆豪くんの容赦ない爆破が彼女を襲っていく。
「まだまだぁ!!」
観ることが辛い光景で目を瞑りそうだったが、しっかりこの試合を見届けたいという思いは強かった。