第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
先ほどの事からミッドナイト先生や、瀬呂くんの体が氷で埋め尽くされている状態の中、轟くんは氷漬けのテープを壊していた。
「瀬呂くん…動ける…?」
「動けるワケないでしょ…痛ぇ…」
「瀬呂くん行動不能!」
誰もがポカーンとしたような状況中、
「ど…ドンマイ…」
「ドーンマーイ!」
観客席からのドンマイコールが広がっていく。
「すまねぇやりすぎた。イラついてた」
「轟くん2回戦進出!」
そう告げられ、身が凍らせたのを左手で溶かしていく轟くんの姿に何も言えなくなってしまう。それに、
(あの顔は…)
一瞬試合中に見せた顔、お昼の時間に彼の深い過去についても聞いてしまった事もあり余計不安な気持ちになる。
(……)
体育祭の時、結局声をかける事はなかった。ずっと立場上近づかない方がいいと思っていたからだ。でもさっきの試合のあの状態を見て、気持ちが揺れた。
私だって人間だ。振られた相手だとしても、諦めようとしても、好きな相手だった。辛そうな時に気にかけて助けてあげたいという気持ちが芽生えてしまうのは本能としかいいようがない。
(‥‥どうしたらいいの)
自分が彼にしてあげれることはあるのだろうか。
ヒーローを目指す立場でもない自分、彼の過去を知った上で何もできなかった自分、もう以前の仲には戻れない自分が?
そう思うと、何もできないような気がする。
でもこのまま辛い状況を見守るだけでいいのか?そういった疑問も出てきた。
(…正解はきっとない。)
結局は自分で決めるしかないのだろう。告白する事を選択した前の私のように、
《B組からの刺客!綺麗なアレにはトゲがある!?ヒーロー科塩崎茨!》
《VSスパーキングキリングボーイ!ヒーロー科上鳴電気!》
試合は普通に決行されていく。賑わう観客席の中で、私は自分なりのある決断をした。