第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
徐々に焦りを感じたのか、心操くんは語りを続いていく。緑谷くんは真正面に彼の元へ突進していった。
「俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ。恵まれた人間にはわからないだろ。誂えむきの個性に生まれて望む場所へ行ける奴らにはよォ!」
彼の肩を思いっきり後ろへ押さえていく場外させようとする緑谷くん。それを防ぐため怪我している緑谷くんの指を払い、顔面を殴る心操くん。
互いに場外へ出そうとする二人の姿は、個性を使っていないにも関わらずすごい緊迫感だった。勝負はどちらが勝つのか見当もつかなった。しかし、
「ふざけたことを!おまえが出ろよ!!」
「あああああ!」
緑谷くんが心操くんの腕を掴み背負い投げをすると、心操君はそのまま床へと突き落とされると同時に、除外ラインを越えていた。
「心操くん場外!緑谷くん2回戦進出!」
《最終種目、真っ先に2回戦に進出したのはA組緑谷出久!!》
緑谷くんの勝利だった。
「心操くんは何でヒーローに?」
「憧れちまったもんは仕方ないだろ」
結果が発表されると、緑谷くんと心操くんで何か話をしているようだった。何か感じる事があったのかもしれない。試合中はずっと切羽詰まっていたような心操くんの表情が少し変わっていた。
「かっこよかったぞ心操!」
「おつー!」
「正直ビビったよ!俺ら普通科の星だな!」
「障害物競走1位の奴と良い勝負してんじゃねーよ!」
近くで見ていた普通科の皆の反応は彼の功績を称えていた。普通科の生徒だけでなく、プロヒーロー達の反応も好調だ。それほどこの試合での心操くんの活躍が目に留まったらしい。
心操くんの頑張りがあってこその結果だ。
「…結果によっちゃヒーロー科編入も検討してもらえる。覚えとけよ。今回は駄目だったとしても絶対諦めない。ヒーロー科入って資格取得して絶対おまえらより立派にヒーローやってやる!」」
「うん!」
「そんなんじゃすぐ足を掬われるぞ。せめてみっともない負け方はしないでくれ」
「うん!あっ…」
緑谷くんに顔を向けている表情がいい意味で生き生きしていた。なんだか少し前進したような気がする。
(心操くん、お疲れ様)
私は心の中で彼にそう言って拍手した。