第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
(ふわふわガールって?)
あまりに定義があやふや過ぎてどうしようと考えを巡らせる。とりあえず雰囲気が柔らかい女の子を探したらいいのだろうか。
(でもそんな特定な人っているのかな…)
とりあえず手当たり次第にあたりを見渡してみる。すると、ある人物が目に留まった。
『あっ、』
1年A組のチア服を着て応援している茶色髪の女の子だ。第一種目、発目さんと遭遇した際にちらっと顔だけは見たことはある。彼女本来の性格と違っていたら申し訳ないが、癒される笑顔を向ける彼女は、このお題にもっとも近い人物像ではないかと思えた。
私は彼女のもとへ近づくと、応援していた彼女の目が点となって自分を見つめる。
「えっと…?」
『す、すみません!借り物競争のお題で…一緒についてきてもらっていいですか?』
「わ、私??」
あまり馴染みがない人に声をかけられたら流石にびっくりするだろう。彼女にお題を見せてみる。自分から声をかけるのは得意ではないが、今はそれを気にしている場合ではない。
「わかったよ」
彼女の了解を得て、彼女の手首を握って走り出し、ゴールを目指した。幸いお題の判定はOKとされたのだ。
「なんとか到着できたね!」
無事成功したので走った息を整えていると、自分が無意識に彼女の手首を握っていたことがかわった。無意識とはいえ親しい仲でもないのに触ってしまった。気に障ってないだろうか。
『ああっ、ごめんなさい!勝手に手握っちゃって』
「あはは、大丈夫だよ~」
結構早くゴールしてしまって、一時この試合が終わるまで待機してほしいと言われ、隣の彼女と一緒に待機する事になった。
『えっと…』
改めてこうして話すのは初めてで、どうしたらいいものかと悩むがあちら側から声をかけてくれた。
「第一種目で会ってたよね?」
しかも彼女は自分を覚えてくれていた。なんだか嬉しい。
「そういえば自己紹介がまだだったね!私A組の麗日お茶子。」
『あ、普通科の一条沙耶です…って、』
麗日さんという名前をトーナメント表でみた気がする。
『最終種目に参加するんですよね…?』
「あっ、うん、そうだよ!」
『すごいですね!おめでとう!』
「…」
そう伝えると彼女の表情が一変し少し緊張気味になっているのに気付いた。