第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
彼らの会話を終わった後、私は色んな感情が芽生えていた。轟くんの話が本当ならば、彼は今も家族の間で苦しんでいて、お父さんを否定し続けているということだ。
彼の過去は知っていた。でも中学生の頃は自分のことで精一杯で、本当の意味で彼の抱えている苦しみや立場をわかってあげられなかったのだ。
(私は…)
小さい頃から色々助けてくれたのに、なんで自分は彼に何もしてあげられないのだろうと、自分が嫌になりそうだった。
「おい、モブ女」
『…あ、は、はい!』
横にいる爆豪くんに声をかけられ、意識が彼に向く。彼がいることをすっかり忘れていたのと、「モブ女」が一瞬誰の事かを理解するのに時間がかかり、返事が遅くなってしまった。自分の事だったのかと苦笑いする。
「お前あの半分野郎の知り合いか何かか」
『え…?ど、どうしてわかったの?』
「……」
思わず彼を見つめるが、自分の質問に答えてくれそうになかった。心底嫌そうな顔をしていたからだ。
「それよりその面やめろや。反吐が出る。」
『へ…』
「あの野郎とどういう関係か知らねェがな、てめェがそんな顔したところで何も変わんねェんだよ」
『そんな顔って…?』
「自分で考えろアホ」
そういうと彼はその場を去ってしまう。アホって言われてしまった。彼なりの励ましのつもりだったのだろうか…いや、それはないか。
(でも、爆豪くんの言う通り、か)
今更後悔をしても、過去は変える事が出来ない。その事実を苦々しく受け入れて、私は本来行くべき食堂へ向かった。
《さぁ昼休憩も終わっていよいよ最終種目発表!とその前に予選落ちのみんなに朗報だ!あくまで体育祭、ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!》
(全員参加の種目っ!)
予選落ちの人にもチャンスが与えられるなんて嬉しい朗報だ。
《本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ…ん?どうしたA組!?どんなサービスだそりゃ!》
1年A組の女子生徒が何故かチア服で並んでいる。あまり顔がよろしくない所を見ると何か訳ありみたいだ。
《みんな楽しく競えよレクリエーション!それが終われば、最終種目進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!1対1のガチバトルだ~!》
そして最終種目ももうすぐ目の前だった。