第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
そろそろ昼ご飯に行こうとしていた時、
「はぁ?!なんでこっちきてんの?!」
『…?』
「あーうるさいな。わかったから…」
電話越しでしゃべっている理央ちゃんの声に少し驚く。自然体で話しているからに、親しい人なのだろう。会話が終わったのか、携帯をそっと閉じる。
『どうしたの?』
「親が体育祭を観客席で今見てるんだって、」
『親御さん来てらっしゃるんだね。』
「あ…それで、ちょっと会いたいって言うんだけど、」
雰囲気から察するに今から家族の方に会いに行こうとしているのだろう。
『私は大丈夫だよ。ご家族の方が大事だろうし、』
「いやー本当にゴメン。ちょっとだけ会いに行ってくるから、先に食堂の方へ行ってて、連絡するから」
『うん』
家族との交流は大切なものだ。それは自分の経験上痛いほど実感しているので彼女を笑顔で送り出した。
彼女を見送り、私は食堂への道を自分の記憶を頼り進んでいった。このまま直行するつもりだったが、人影が薄い入口が目に入った。
(学校関係者専用…?)
そう書かれている看板が近くに置いてあったため、興味半分でその入口に近づこうとすると、急に後ろから手で口を塞がれたまま引っ張られてしまった。
『んん!?』
「…大声出すんじゃねぇ、静かにしろ」
威圧感のある命令口調に後ろを振り返ると、少し顔なじみのある人がそこにいた。
(…A組の爆豪くん?)
今回話すのも初めてな上に、口を塞がれているこの状況が理解できずにいたが、とりあえず分かったと軽く頷くと塞いだ手を離してくれた。いつも怒っている印象が強い彼とは思えないほどの真剣な表情に息を飲みそうになる。一体何事なのだろうか、
すると入口の中から声が聞こえた。
「ち、違うよそれは!もし本当に隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うけど!とにかくそんなんじゃなくて…!」
「そんなんじゃなくて、って言い方は少なくとも何かしら言えない繋がりがあるってことだな」
(轟くんと…緑谷くん?)
二人の会話を立ち聞きしている気がして、一瞬良心の呵責にさいなまれたが、
「俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ、万年No.2のヒーローだ。おまえがNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は尚更勝たなきゃいけねえ」
彼の確固たる意志に思わず耳を澄ましていた。