第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
第一種目に脱落した生徒たちは、観客席へ向かうように指示され、私は観客席にて第二種目を見ることになった。
「そして次からいよいよ本選、第二種目よ!」
騎馬戦と書かれている画面にミッドナイト先生の説明が入る。2人から4人のチームを自由に組んで騎馬を作り、先ほどの結果に従い各自にポイントが振り当てられていく方式らしい。
「そして1位に与えられるポイントは…1000万!!! そう、上位の奴ほど狙われちゃう下克上のサバイバルよ!」
まるで現実のヒーロー競争を再現しているかのような構図だ。それを今体育祭を通してさせようという事なのか、
(…凄いな)
到底自分はたどり着けない領域な気がした。それほど生半可な気持ちではヒーローにはなれないという事なのだろう。
「それじゃこれよりチーム決めの交渉スタートよ!」
15分の時間が設けられ、観客席が賑わっているのを感じる。これから始まる第二種目の高揚感が漂っていた。
(……)
会場の高揚感とは裏腹に、自分の心はここにあらずだった。
「沙耶、どこにいくの」
『…お手洗い行ってくるよ、』
「すぐ第二種目始まるんだから、早く戻ってきなよ」
『...うん、』
第二種目が開始が始まる前に少し休憩がしたくて、その場を去った。
『おばあちゃん』
「見てたよ。」
おばあちゃんからの電話だった。先ほどの第一種目を見ていてくれていたのだろうか。
『……ごめんね。おばあちゃん、1回戦突破できなかった』
「何を言ってるの。沙耶は頑張っていたじゃないか。おばあちゃんそれだけでも嬉しいよ。」
『…うん、ありがとう』
「せっかくの機会、体育祭、アンタも楽しみなね。」
励ましの言葉を受け取り、会話が終わる。運がなかったとはいえ、アイテムシューズを用意してくれた発目さんや校長先生に申し訳ない。おばあちゃんやお父さんも見てくれてたのに期待に応えられなかった気がしてならない。
『はぁ…』
思いのほか落ち込んでいる自分に驚く。自己嫌悪しそうになるのは悪い癖なので感情を切り替えようとしていた時、無意識にある言葉を思い出していた。
ー個性もないアンタが頑張ったところでどうしようもないでしょ?
小さい頃言われた今はいない母の言葉。なぜかその言葉が引っかかって頭の中を離れなかった。