第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
《今一番にスタジアムへ還ってきたその男。緑谷出久の存在を!》
もう1位が決まってしまった。1回戦へ進む事ができるのは後半分しかいない。急がないとという思いで進み出すが、
『っ!』
早くいこうと焦るあまり、途中で足が滑ってしまい転んでしまった。幸い地面が氷に包まれていたから地雷を踏まなくてすんだが、後ろから生徒たちが次々自分より前へ通り抜けていく。
(早く走れ、走れ…っ)
お父さんやおばあちゃんに頑張っている所を見せてあげないといけないんだ。だからお願い足動いて!その一心で走っていった。
『はぁ、順位は…』
自分が第一種目を無事到着した頃には、すでに大勢の生徒たちがいた。1位が緑谷くん、2位が轟くんだった。そして、最終順位まで確認してどこにも自分がいない事に気づいた。ああ、とそこで自分は理解した。
第一種目に落ちたということを
『おめでとう、心操くん。』
「あ、ああ」
心操君が見えて声をかける。普通科で第一種目に通過できたのは彼だけだった。
『悔しいけど後悔はしてないよ。自分なりのベストを尽くしたと思うし』
「…いや、」
『客席で応援してるね』
なんだか歯切れが悪いように感じるのは、やはり洗脳の件からだろうか?気にしなくてもいいのに。それに単純に彼が通過できたという事は喜ばしいことだ。これでヒーロー科へ行けるチャンスを掴めたわけだし、彼の夢を心から応援したい。
「ギリギリ惜しかったね」
後ろから理央ちゃんが声をかけてくる。あの時転んでしまった事により、一瞬で自分のチャンスを逃してしまったのだ。運は味方してくれなかった。それだけの事。
『1回戦突破できたらおばあちゃんに自慢できそうだったのになぁ、あはは、残念』
「…そう」
『……あ、』
大勢の生徒の中、轟くんの姿が見え、無意識に彼を見つめる。結果は2位で十分な成果だが、ヒーローを目指す彼にとっては納得できない部分があるのか、表情はあまりよくなかった。つい声をかけそうになる自分を必死に抑えて目線を逸らした。
「どうかした?」
『……なんでもないよ。』
もう中学の頃とは状況も何もかも違う。ましてや振った相手に声をかけられるなんて負担にしかならないだろう
『........』
私は彼に言葉を交わす事はできなかった。