第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
『洗脳された?』
記憶にまったく覚えがないが、進もうとしていた所を心操くんに手伝ってほしいと言われ、それ以降の記憶がないということは「個性」を使われたということになる。
(心操くんらしいというか、なんというか)
別に洗脳されたからと言って怒る気は全然起きなかった。ヒーロー科に行くという彼の強い思いを知れば、そんな気にもなれなかった。肝心の心操くんももう最終関門へ進んでいるはずだ。自分も注意して最終関門を進み出した。
(ふう…集中力使うなぁ)
早すぎると地雷が待ってるし、慎重すぎると1回戦敗退になるのでバランスよく進まないといけないのが大変だ。
『てめえ!宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!』
《後続もスパートかけてきた!だが引っ張り合いながらも、先頭2人がリードかぁ!?》
遠くて見えないが、恐らく個性を使いながらいがみ合ってるのを見るに、轟くんと、選手宣誓をした人だろう。
『よし!借りるぞかっちゃん!』
『大爆速ターボ!!』
爆発音が響くと、武器を手に飛んでいく緑色髪の生徒。先ほど部品を取ろうとしていた時に鉢合わせた彼だったが、「個性」を使わずにここまで行動できる事が凄いと感じた。
《後方で大爆発!?何だあの威力!?》
《偶然か故意か!?A組緑谷、爆風で猛追!!》
爆風に押されて一瞬にして前方の二人を抜いていく。客席の歓声が聞こえていた。彼は緑谷くんという名前らしい。
《つーか抜いた!》
「デク!俺の前を行くんじゃねぇ!!」
「後ろ気にしている場合じゃねぇ…!」
《元先頭の2人。足の引っ張り合いを止め、緑谷を追う!》
上の順位は、どうやら3人に集中しそうだ。もう結果はすぐそこという事なのだろうか。ならばもう時間がない。私は地面に付着している氷を見ながら渋々心の中で謝る。
(轟くん、ごめんなさい)
私は咄嗟にアイテムシューズの機能を使い、氷の上を滑って前へ進んだ。
その後、失速し始め着地しそうになった緑谷君だったが、体制を整え手に持っていた部品を地雷に叩きつけて、爆発させて勢いをつけて優勢を保っていた。
《緑谷間髪入れず後続妨害!なんと地雷原即クリア!》
《雄英体育祭1年ステージ!序盤の展開からこの結末を誰が予想できた!?》
『はぁ、はぁっ』
自分もラストスパートを掛けて、ゴールを目指した。