第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
インパクトが凄いが、さすがヒーロー科というべきなのだろうか。選手宣誓の例がわからないので何とも言えないが、初っ端からフルスロットルといった感じだ。とりあえず拍手しようとすると、
「ふざけんな!」
「このヘドロ野郎!」
「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」
普通科や他の科、ましてヒーロー科まで非難の嵐だった。あの宣誓はさすがにダメだったみたいだ。それでも堂々としている彼は彼でなかなか凄い。それほど体育祭にかける思いが強いのかもしれない。
「さーて、それでは早速始めましょう」
「第一種目はいわゆる予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!さて運命の第一種目、今年はこれよ!」
「障害物競走」と書かれた画面を見ると、ミッドナイト先生の説明が始まる。全員参加のレースであり、コースはこのスタジアムの外周役4kmもするらしい。予想はしていたが、これはかなり体力が入りそうだ。
「我が校は自由さが売り文句!コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」
何をしても構わない。つまり個性持ちの人は個性使用は可能という事になる。とりあえず自分はこのアイテムシューズをうまく活用できるようにしておこう。
(おばあちゃん、お父さん、私頑張るからね)
軽く深呼吸して準備態勢に入ると、信号の変化と共にミッドナイト先生の声が響く。
「スタート!」
すると全生徒が駆け抜けようと一つの門に集約してしまい、なかなか前に進む事ができなかった。
『うっ』
こないだの緊急事態の件を思い出してしまい、挫けそうになるのを抑えて前に進もうとしていた。すると、
「最初のふるい」
空気が一瞬にして凍り付くのを感じて周りを見渡すと、地面が凍ってしまっていて、ましてや生徒たちの足が氷で固定されてしまい動けなくなっていた。それは自分も同じだった。
(これは…轟くんの個性?)
私は咄嗟にボタンを手にして靴の形状を耐凍性に変え、裏のギアを動かせる。自分の足に付着している氷を削るためだ。
『うわっ?!』
思いのほかギアの勢いが相まって、氷がすべて削れると同時に転びそうになる。氷の上が滑りやすいからだろう。私は転ばないように慎重に前へ進んでいった。
「甘いわ轟さん!」
「そううまく行かせねぇ!半分野郎!」
門の向こうで生徒たちの声が聞こえていた。