第6章 見直しと壁【原作編(雄英体育祭)】
心操くんは自分の予想以上にヒーロー科へ編入する事の意識が高く、ヒーロー科の生徒に対して宣戦布告していた。一つひとつの言葉にその意志が感じられた。
「隣のB組のモンだけどよぉ!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ったんだが、エラく調子づいちゃってんなオイ!」
「おめーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねぇか!」
「上にあがりゃ関係ねぇ」
「く…シンプルで男らしいじゃねぇか」
「言うね」
「一理ある」
「いやいや騙されんな、無駄に敵を増やしただけだぞ」
B組の反応や、それに対してのA組の反応の光景を見つめる。ヒーローになるという目標のため頑張っていることがよく伝わった。
(…すごいな)
やはりヒーローを目指している事がはっきり決まっている人と、目標に向けてまだ彷徨ってる自分とでは目的意識も違うんだろうな、
『えっと、皆、とりあえずA組の皆さん通れなくなってるから、それぐらいにしてあげようよ。』
残念そうにしながらも見物出来て満足できたのか、普通科の皆が少しずつ去っていくのを見守る。他のクラスの皆も各自戻り始めてそろそろ自分も帰ろうとした瞬間、
「一条、」
『と、轟くん』
彼にまさか声をかけられるとは思わず怯みそうになった。少しA組の門から離れると、真正面に彼の顔を見つめ、こないだの件について謝らないといけないと思った。
『あの、こないだはゴメンね。まさか同じ学校とは思ってなくてびっくりしちゃって、』
「…いや、それはもういい。」
若干空回りな自分に対して淡々と話す彼は相変わらずのようでいてなんだか雰囲気が重かった。そして周りから感じる視線も気になってしまった。
(気まずいな…)
改めてこれ以上何を言えばいいかわからずにいると、彼の方から告げられた言葉は、
「俺は、本気で取りに行く。それはお前もわかるよな。」
『…うん』
体育祭に対しての宣戦布告なのだろう。それほどこの雄英体育祭に対して真剣であることが分かった。
「だから、お前と「仲良しごっこ」をするつもりはない。」
『…っ!』
「用はそれだけだ」
目を鋭くこちらを見つめると、彼は先に行ってしまった。
(そっか、)
ヒーロー科の彼と普通科の自分。もうあの頃みたいに気軽に話し合える仲には戻れない。その事実を決定づけるようだった。
