第2章 優しい思い出【過去編】
「轟焦凍くんはしばらくお休みします」
幼稚園の先生の言葉に、驚きを隠せなかった。昨日まで普通に一緒にいたのに、何があったんだろうか。とても気になっていた。他の幼稚園の子たちも同じみたいだった。
「せんせい!しょうとくん、かぜなの?」
「どうして休むの?」
一斉に質問が続き、大騒ぎになりそうになる前に、先生は笑顔を向けながら答えてくれた。
「大丈夫よ。少し疲れちゃって休むだけなのよ。焦凍くんが戻ってきたら、また笑顔で迎え入れてあげましょうね」
「はーい」
詳しい事は教えてくれなかった。大丈夫なのだろうかと心配する心を他所に、他の子たちは興味が薄れたのか、別々に離れていく。
(しょうとくんだいじょうぶかな)
私はそう考えているとき、何か自分にできることはないかなと思い、そばにある色鉛筆や紙を取り出した。
(おてがみ書こう)
彼が元気でありますようにと、願いを込めて書き始める。
「しょうとくんへ
おやすみするってききました。
ゆっくりやすんで、またげんきになったしょうとくんにあいたいです。またあおうね
さや より」
横にお花の飾りをつけて完成した。後はどうやって渡すか考えていた際、先生を見つけた。
『せんせい、』
「沙耶ちゃん、お手紙書いてたの?」
『はやくなおってくれたらいいなって思って…ねぇ、せんせい、これ渡すのどうすればいいの?』
「わかったわ。じゃあ後で焦凍くんのお姉さんに届けるわね。」
『しょうとくん、おねえさんいるの?』
彼にお姉さんがいることは知らなかった。それはそれで気になり出し、先生に質問しようとしたが、もうお昼の時間ということで自然と会話は消滅した。早く元気になった彼に会いたいなと願っていた。彼と家族の間で悲惨な出来事があったのも知らずに_______
一週間後、
久しぶりに彼が来るという事を聞いた私は、喜びに満ちていた。しかし、彼の顔を見て思わず困惑する。
『しょ、しょうとくん‥‥?』
「‥‥」
怒りや憎悪に満ちた顔で現れた彼は、まるで違う人間になっていた。